経済安全保障政策の5本柱について

 

岸田内閣は、経済安全保障に動き始めた。 これは、岸田首相が政調会長時代から取り組んでいた

課題である。

21年11月には、自民党に経済安全保障対策本部が設置設置され(衆院選の公約)、高市氏が本部長に就いた。そして、政府にも、岸田首相を議長とする経済安保対策会議が設置され、12月から内閣官房の経済安保法制準備室を中心に法案の審議が始まった。法案の作成は、小林経済安保担当大臣の任務である。実にまどろっこしい感じがするが、やっと動き始めたのである。

           

 現在、法案の四本の柱が提起されているが、以下の細項目をぜひとも推進してもらいたい。

 

    サプライチェーンの強靭化

   中国に進出した企業の移転促進(優遇税制、補助金)

   医薬品など戦略物資の安定調達、備蓄

   半導体の開発と生産(誘致、防衛予算で手当て)

   レアメタルの採鉱と備蓄の促進(リチウム、JOGMECの活用・・)

  

② 基幹インフラの強靭化

   通信、電力、金融などインフラの安全性と信頼性を高める

   国が電子機器や管理業者を審査、認証する体制づくり

   侵入被害の報告義務付け

   国の機関による侵入テストの実施

   個人情報等の管理の外国委託の禁止

    電子情報セキュリティへの投資促進(国家補助、税控除等)

 

③ 官民の技術開発と機微技術の管理

   先端技術の開発のため産業政策の復活

   国防政策として、防衛省に予算を配布する(日本版のDARPA)

   機微技術を定義し、 大学、企業からの機微技術流出を禁止(罰則を科す)

          中国の国防7校からの留学生のビザ発給を停止(39人が留学中)

 

④ 特許の非公開化

   軍事転用の恐れがある特許の公開を制約

   ライセンス料を国が補償する

           特許侵害訴訟に対する国の支援

 

しかし、これだけでは不十分である。我が国の国力を弱めようとする諸外国に対する経済制裁法の強化も図らなければならない。

 ⑤  経済制裁法の強化(国防、危機管理の項を参照ください)

  外国の対日投資の審査体制の強化

  輸出管理の強化(禁輸企業リスト、機微技術リストの整備)

  企業の秘密保全資格の制定

  報復としての経済制裁(輸出信用状の制限、銀行取引の制約、戦略物資の輸出制限等)

   電磁的侵入に対する報復措置の強化(相手側のサーバー等の破壊)

  許可なく個人データ等を利用した場合の制裁(EUのデータ保護規則(GDPR)による

  情報漏洩の制裁金、GAFAの活動を制限)

   経済スパイ対策法(アメリカ)USC18-1831の日本版を制定する

       英国の国家安全保障・投資法(NSI)の日本版を制定する

    外国の干渉工作の排除(オーストラリアの外国干渉透明化法、アメリカの外国代理人登録法の日本版)を制定する

⑥  なお、本法の対象となる基幹インフラ分野については、2021年11月から2022年2月にかけて行われた経済安全保障法制に関する有識者会議の検討結果を経て、最終的に14分野(電気通信、放送、金融、航空、空港、鉄道、電気、ガス、水道、貨物自動車運送、外航貨物、クレジットカード、石油、郵便)に絞られた。しかし、政府・行政サービス、医療、化学、と街路が対象から外れている。政府・行政サービスにおける外国製アプリの採用、街路における外国製監視カメラなどに、注意を払う必要がある。

 

 ⑦ そして、最後に 事後検証を加えなければ、ならない。

つまり、半年ごとに、各省庁の進展状況を検証し、公表することである。これは、内閣が変わっても3年間は継続しなければならない。

 

なお、国家の安全保障政策は、通商条約に優先することを忘れてはならない。WTOの規約で、

外国人の土地保有を例外としてないために、これを禁止できないとする議論があるが、本末転倒である。例外措置を講じていない国でも、英国のように、外国人の土地保有に制限を加えている先例があるのだ。