放射性廃棄物の最終処分に関する法律について

 

放射性物質は、上手に管理応用できるならば、人類社会にとって極めて有用なものであるが、管理を間違えると極めて有害なものとなる。放射性物質の処理に関する研究開発は、怠ってはならないものであるが、そのイメージがよくないために、それを受け入れる自治体は少ない。まして、その廃棄物の処分を積極的に受け入れる自治体は、きわめてまれである。

 

これまでは、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成12年)により、その処分の要領が定められてきたが、いくつか重大な問題点が残っている。

 

① 第一に、候補地の文献調査、概要調査を経て最後に精密調査が求められているが、最終決定までに20年の歳月を要するという致命的な欠陥がある。文献調査と概要調査と精密調査は、同時に並行して進展させ、5年以内に決定するよう、期間を短縮しなければならない。超高速のコンピューターを用いれば、各種のシミュレーションは、短期間に遂行することができるからである。

 

② 第二に、候補地の選定と立候補は、地方自治体に任されているが、4年ごとに首長が選出されるので、20年間も同意を継続することは、極めて難しいと思われる。言い換えれば、20年間の調査期間を設けることによって、NUMOは、自縄自縛の状態に陥っているのである。せっかくNUMOという専門機構を設けながら、実際に動きがとれない状態に自らを追い込んでいる。

 

③ また、地方自治体には、放射性物質の専門家はいないので、適地を選定することが不得手である。候補地の選定には、やはり電力会社に責任を負わせるべきと考える。すなわち、「電力会社は、単独または共同で、その排出する特定放射性廃棄物の最終処分をおこなう適地を選定し、関係自治体及び住民の説得に当たるよう努めるものとする」という条項を、経済産業大臣の定める基本方針(法第4条)において明記すべきであろう。

 

④ そして、文献調査等を受け入れた自治体には、その受け取る交付金の額と交付時期を基本方針において明記、公表すべきである。それが明らかになれば、賛同する住民も増えることであろう。

 

⑤ 適地の買収は、あらかじめ電力会社の責任として行わせる必要がある。最終決定した段階で、NUMOが、電力会社から買い取ることとすればよい。各電力会社は、高圧鉄塔のある山間部の地質等を知悉しているので、港湾候補地も含めてあらかじめ適地を広範囲に安価で買収しておくことが容易にできよう。結果的に、廃棄物処分場にならなくとも、NUMOは、これを放射性物質の軽減化の研究所等に活用することとすればよい。

 

⑥ 経済産業大臣は、特定放射性廃棄物の処分及び管理に関し地質学的に適合すると認められる長期安定地域を詳細に公表するものとする。地震や噴火等の長期にわたる影響をシミュレーションして、適合していると認められる地域を公表しておけば、①の調査期間をもっと短縮することができるのではないか。

 

⑦ NUMOの任務に、放射性物質の低減技術の開発を加えるべきであろう。莫大な財源を抱えながら、宝の持ち腐れになっているのは惜しい。これこそ、我が国が国際貢献しうる重要な分野である。