広告代理業の寡占排除法

 

我が国の広告代理業は、電通、博報堂、ADKの三社の寡占状況が続いている。特に、電通の支配状況は、他社の追随をゆるさず、その報道、放送、出版に対する支配力は他国にも類を見ないほど強力なものがある。

例えば、オリンピックの放映権は、以前はNHKがオリンピック委員会と直接交渉していたが、いまでは、電通を介して契約をすることになっている。(その結果、NHKのオリンピック放映料は、倍近くに跳ね上がった。)

 電通のネット広告の不正請求(111社のネット広告の不正請求、虚偽報告詐欺事件)は、トヨタによって明るみにされたが、そのほか電力業界にとって不都合な原子力関係の情報が電通により抑圧され、週刊誌や新聞の記事が電通の圧力によって削除、加減されたという事件は、枚挙にいとまないほどである。

 

 本来であれば、放送界、新聞、出版界が、独自に広告を集めればよいのだが、すっかり広告代理店に営業を任せてきた結果、代理店の意向が不当にも強くなりすぎ、報道内容にたいしても不当な影響力が行使されていることは重大な問題である。

 また、ある広告会社が、特定の巨大企業、政府または外国機関の影響を受けている場合、報道の偏向または報道隠ぺいを招く恐れもある。こうした状況を見ると、特に放送番組の時間割と広告割り当てを支配している広告業界の寡占状況に対し、公正取引委員会は、これを調査し、排除勧告を出すべき時期が来ていると思う。また、寡占を排除するため広告会社の市場シェアーを制限する法律を制定することも必要であろう。

 

広告業界の寡占支配を打破するための一つの有力な方策として、一つの広告代理店が、競合する二つ以上の企業の広告を担当することを禁止する必要がある。

会社法においては、取締役等との利益相反の禁止原則がきびしくうたわれていながら、広告業において、競合企業間の利益相反が問題にされないのは、不可解な現象である。

欧米においては、広告会社は、競合する企業の広告を同時に請け負ってはならないと厳しく規制されている。電通が、トヨタと日産とホンダの広告を同時に請け負っているのは、どうみても商業倫理上おかしいのである。

 

国際オリンピック委員会(IOC)は、スポンサーについて「一業種一社」の原則を守ってきたが、これを破壊したのが、元電通専務の高橋治之であったことは、マスメディアでも報道された。彼は、五輪組織委員会理事に就任後、IOCの原則を破り、一業種複数社のスポンサーを募り、巨額な広告費を集めたのであった。

 

広告代理業の寡占排除法

 

1 広告代理店は、一業種につき同時に二以上の企業から広告を請け負ってはならない。

2 同一の資本系列下にある広告代理店群は、全体として一業種につき二以上の企業の広告を請け負うことができない。(同一の資本系列とは、持ち株会社または親会社の保有する資本割合が3割を超えるものをいう。)

3 広告代理店または同一の資本系列下にある広告代理店群は、年間を通して一つの放送局、新聞社、出版社の広告の2割以上の広告を請け負うことができない。(4社以上の参入を可能ならしめるためである)

4 広告代理店は、その前年度の請負状況を、放送局、新聞社、出版社ごとに会計年度の終了後二か月以内に総務省に届けなければならない。

5 総務省は、広告代理店の占有状況について、毎年、国会に報告するものとする。

6 所要の罰則を設ける。