研究教育に対する外国関与情報の公開法

 

中国が08年に始めた千人計画は、現在全世界で7000人を超えているものとみられている。共産党中央組織部は、09年9月に、千人計画には204名の学者や研究者があらたに参加したと公表しており、その中には、日本人も招致されていると明記されている。

いうまでもなく、千人計画は、諸外国の高度の軍事技術や軍事転用可能な民生技術を違法に取得するための隠れ蓑である。そして、外国の科学者には、潤沢な研究費を与える代わりに、計画に関与していることを一切口外しないように命令しているとされる。

アメリカで逮捕されたハーバード大学の有名教授もその一人であった。

日本学術会議が、中国と協力して軍事研究を行う協定を結んでいることは、やっと最近公表された。

 

しかし、我が国では、外国関与の状況を報告させる法律がないため、どの分野で何人の学者や研究者が、中国から支援を受けているのか、把握していない。

また、大学の教育現場においても、孔子学院が設立されているが、中でいかなる教育を行っているのか、中国が教師の人件費やテキスト代を払っているのか、についても不明なままである。

 

アメリカの大学と孔子学院の契約では、アメリカの大学と教師は孔子学院を批判してはならない、批判した場合は助成金を停止する、中国人教師は中共の法律に従わねばならない(したがって、天安門事件も法輪功迫害も触れてはいけない。現地情報の提出が中共より求められた場合は、従わねばならない、中国の国防に協力しなければならない)などの条項がある。

 

 

 

中共には、国家国防科技工業局が直接管理する「国防7校」と呼ばれる大学がある。北京航空航天大学、ハルビン工業大学、ハルビン工程大学、北京理工大学、南京航空航天大学、南京理工大学、西北工業大学の7校である。文科省が、21年10月に発表した「海外の大学との大学間交流協定、海外における拠点に関する調査結果」によると、我が国の43の国公立・私立大学がこの国防7大学と提携を結んでいる。東京大学、東京工業大学などの研究機関が、国防7大学からの留学生や教授などを受け入れて、高度の軍事応用可能な諸研究に従事させている。

 

21年5月の公安調査庁の報告書によると、ジェットエンジン、流体科学、耐熱素材などの中国人専門家9人が、我が国の大学から帰国後、中国で極超音速研究に従事しているという。我が国のセキュリティ管理がずさんなため、養成された中国人研究者が高度の軍事技術を開発し、我が国の平和と安全を危殆に瀕しているのである。

 

よって、至急、研究教育に対する外国の政府、企業、団体、政党などの関与を明らかにして、これを公表、防止する制度を構築しなければならない。

 

① 我が国の研究機関、教育機関は、これまで外国またはその代理人(別に定義)から受けてきた資金供与、便宜供与、人材派遣などについて、過去にさかのぼってすべて文部科学省に報告しなければならない。契約がある場合は、その契約内容も報告しなければならない。

② 研究機関、教育機関は、毎年度末に当該年度において外国から受けた資金供与、便宜供与、人材派遣などの状況および契約内容を所定の様式により文部科学省に報告しなければならない。

 

③ 企業や民間の研究所、研究員についても、同様の報告義務を負わせ、この場合の報告は経済産業省に対し行うものとする。

 

④ 文部科学省及び経済産業省は、毎年9月までに、融資、出資を含め、外国関与の状況を国会に説明するとともに、電子媒体により公表するものとする。

⑤ 特定軍事関連技術(別に定義)は、国籍にかかわらず、国の従事資格審査に合格した者でなければ、その研究に従事させてはならない。(先端情報通信技術、先端制御工作機械、航空宇宙技術、海洋建設機械、先端発電技術、軌道交通設備、高度医療機器などを指定し、セキュリティクリア資格を確立する必要がある)

⑤ 紛争国(別に定義)から資金供与等を受けている場合、政府は受領しないように勧告するものとする。勧告に従わない場合は、これを公表するものとする。

⑥ 所要の罰則を設ける。

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孔子学院 海外でも警戒 米は資産報告義務、豪で閉鎖も

北京市内にある「孔子学院」本部(共同)
北京市内にある「孔子学院」本部(共同)

 ポンペオ前国務長官は昨年8月、孔子学院が「中国共産党による世界規模のプロパガンダ工作に使われている」と断定し、米国内の学院を統括するワシントンの「孔子学院米国センター」を大使館や領事館と同様の外国公館に指定すると発表した。

 同センターに米国内の人事や保有資産を米政府に報告することを義務付け、米当局が孔子学院の政治宣伝活動の実態把握を容易にすることを狙ったものだ。

 前政権は昨年末、米国の小中校や大学などの教育機関が孔子学院と契約や提携した場合は報告を義務付ける行政命令も発表した。

 この行政命令は、今年1月にバイデン新政権が発足した時点で行政管理予算局(OMB)による審査が終了しておらず施行されずに差し戻されたため、現政権下で改めて行政命令として再提出するかどうか検討を進めている。

 バイデン政権も孔子学院に厳しい対応を取る姿勢は前政権と共通しており、中央情報局(CIA)のバーンズ長官は2月の指名承認公聴会で孔子学院について「真のリスクだ」と指摘し、米教育機関に「厳重な警戒」を要請。自身が大学の学長ならば孔子学院を閉鎖すると言明している。 

 オーストラリアでは連邦政府が昨年12月、地方政府や大学などが外国と結んだ協定について、連邦政府が「国益に反する」と判断すれば破棄できる法律を制定。豪州紙によると、連邦政府は国内13大学にある孔子学院について運営実態を調べている。

 

中国共産党の人材獲得センター

中国共産党は「千人計画」をはじめ200あまりの海外高度人材獲得計画を持つ。中国当局は、これらの計画で2008~16年の間に6万人もの海外の科学者や専門家を採用したとしている。しかし、ジョスキ氏によれば、これとは別に、存在が公にされていない世界600カ所ほどの「海外人材獲得センター」が存在し、高度人材をリクルートしている。

この人材獲得センターの表向きの正式名称はないが、この役割と運営を、中国の同郷会、同窓会、専門家組織、技術・教育系企業、大学キャンパスにいる中国留学生や教師らの学友会、現地の中国友好会友連会などの組織に委託することが多いという。大半は統一戦線部と連携していると、ジョスキ氏は指摘している。

日本に46カ所

中国共産党の人材獲得センターは米国(146)が最も多く、次いでドイツ(57)とオーストラリア(57)、イギリス(49)、カナダ(47)、日本(46)、フランス(46)となっている。他にはニュージーランドやスウェーデンなどにも存在する。

中国の地方友好会や科学技術局と提携する日本国内の人材獲得センターは、東京(18)、長野(23)、京都(3)、大阪(2)、さらに福岡、栃木、愛知にも拠点があるという。

報告は、日本での人材募集計画の一例として、中国留日同学総会(All-Japan Federation of Overseas Chinese Professionals)を取り上げている。総会自体の歴史は1916年設立と古い。中国共産党中央統一戦線部および欧美同学会(注釈・欧米に渡航した中国研究者組織)が1998年、在日中国人科学者・技術者のための組織として再度設立した。

中国留日同学総会は、日中間の学者や留学生の交流を通じて、中国共産党の影響力を海外に及ぼすための組織とされる。同学会のトップは、統一戦線部や欧美同学会の幹部が歴任している。

中国留日同学総会は少なくとも8つの人材獲得センターを運営し、日本で高度人材紹介イベントを開催したり、中国での同様な高度人材招聘の企画に日本人科学者を招いたりしている。福建省だけでも、日本から30人の科学者を採用したと言われている。(NTD JAPAN)