郷土防護隊に関する法律---消防団を中核に改変しよう

 

2004年の国民保護法により、大災害、武力攻撃や大規模テロなどを受けた場合に備え、国と自治体は警報、避難、救援の計画を作成することとされた。このような緊急事態においては、集会の禁止、移動の制限、施設や輸送手段の徴用などが求められるが、これらの権利制限は別の法律ーー国家緊急事態法によって規定されなければならない。(本欄の緊急事態対処法を参照)

 

 もう一つ必要となるのは、避難や救援に際して国民の積極的な参画と協力を確保することである。というのは、武力攻撃や大規模テロの際は、自衛隊や消防、警察、病院といった既存の組織だけでは到底間に合わない場合が予想されるからである。

 

 特に、食料、医薬品の配給、負傷者の輸送、看護、宿泊施設の提供、代替通信手段の提供、情報提供など、国民の側が協力できる分野は大きい。しかしながら、輸送手段や通信施設を提供してくれる協力者のリストが不備であったり、相互の連絡、通信に慣れていなかったり、情報提供のやり方がわからなかった場合などには、国民はフルに力を発揮できなくなる。

 

 そこで、あらかじめ協力者のリストを作成し、集合と合同実施の訓練、輸送配給の訓練、情報発信の訓練など、定期的に訓練を実施し、いざというときに間に合うようにしておかねばならない。そのため、市町村ごとに国民防護隊を結成し、相互の仲間意識を高め、後方支援の訓練を施しておく必要がある。市町村が条例で、このような郷土防護隊を編成しておくこともできるが、願わくば、法律を制定し、国が補助金を交付できるよう取り計らうのが望ましい。

 

郷土防護隊法(要綱)

 

①武力攻撃や大規模テロ、大災害など国民保護法が想定する緊急事態に、自己の保有する車両、船舶、機械、住宅、施設や通信機器、食料、医薬品などを提供する用意のある者を、その申し出に基づきあらかじめ登録しておくものとする

②看護、介護、救護、消火、運転、配給、情報提供などの人的サービスを提供してくれる者をあらかじめ登録しておくものとする。

③ 登録した協力者からなる郷土防護隊を自治体の指導の下に地域ごとに編成する。

④ 郷土防護隊員に対し、定期的に実施訓練を行う。訓練日当を支払う。

⑤ 消防団は、郷土防護隊の中核として再編成する。(消防団、輸送団、食料団、通信情報団、医療団、衛生団などに組織化)

 

なお、ニューヨーク市は、2022年に「核攻撃に備えるガイドライン」を発表した。これは、長引くウクライナ侵略にしびれを切らしたロシアが核兵器を用いる可能性を憂慮したものであるが、我が国においても、このような指針を示すべきであろう。

https://www.citysignal.com/how-to-survive-a-nuclear-attack-in-new-york-city/