領海法の改正…津軽海峡等を領海に

 

2021年10月、中国海軍とロシア海軍の艦艇合わせて10隻が日本海から津軽海峡を通過し、その後中露海軍は千葉の犬吠埼沖、高知の足摺岬沖、鹿児島県の大隅海峡をそれぞれ通過して東シナ海に去っていった。2022年3月にも、ウクライナ侵略中のロシアは軍船4隻を津軽海峡を通過させ日本海へ抜けた。

1982年の国連海洋法条約によって、領海の幅は12カイリ以内(約22キロ)と設定されたので、これに従えば、津軽海峡(最も短い部分だと20キロ弱)に公海部分はなくなる。

ところが、津軽海峡は核を搭載した米軍艦船などが航行する場合もあり、そうなると領海の中に核が存在するという非核三原則の“持ち込ませず”に抵触する恐れが生じると当時の日本政府は危惧した。。

そこで、1977年の領海法によって領海を3海里から12海里に設定するなか、あえて津軽海峡や宗谷海峡、対馬海峡西水道、対馬海峡東水道、大隅海峡を特定海域と設定し、領海を沿岸から3海里とした。
しかしながら、中露による日本などへの示威活動は今後も続くと予想されるので、領海法を至急改正し、津軽海峡等を我が領海に指定すべきである。

 

日本政府は、この点をごまかし、あいまいにしているが(下記質問主意書参照)、同盟国の軍艦を除き、相互主義の立場で、事前の許可又は事前の通報を求めるよう明確に規定すべきと考える。

すなわち、事前の許可を求める中国等に対しては、我が領海法において、中国軍船に対し、事前の許可を要求し、事前通報を求める韓国等に対しては我が国も事前の通報を求めるべきである。

また、米国、カナダ、ニュージーランドでは、外国漁船が自国の排他的経済水域に入域する際に、事前通報を義務付けているが、我が国も同様な事前通報制度を設けて、「沿岸国の平和、秩序、又は安全を害する」懸念がある漁船が領海等へ侵入するのを阻止するために活用すべきであろう。

 

政府の奮起を望みたい。

 

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質問本文情報

令和三年六月九日提出
質問第一七九号

外国船舶に対し入域の事前通報を求める制度に関する質問主意書

提出者  篠原 豪

 




外国船舶に対し入域の事前通報を求める制度に関する質問主意書


 いわゆる国連海洋法条約によって、すべての船舶は、外国領海において無害通航権を有し(同第十七条)、沿岸国は、領海における外国船舶の無害通航を妨害してはならない(同第二十四条1)と定められている。
 他方、沿岸国は、無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる(同第二十五条)とされ、我が国も「領海等における外国船舶の航行に関する法律」を制定して、無害でない外国船舶の通航の取り締まりを行っており、同法は、「外国船舶の船長等は、領海及び内水において停留等をする必要がある場合等は、その理由が明らかな場合を除き、あらかじめ、その理由等を最寄りの海上保安庁の事務所に通報しなければならない」旨定めている。
 しかしながら、無害でない通航であるか無害通航であるかにかかわらず、世界には、少なからぬ国々が国内法で、外国船舶が領海や排他的経済水域等に入域するに際して、その旨を事前に沿岸国に通報するよう求めている。こうした事前通報制度は、海洋国家である我が国にとって極めて大きな影響を与えることは言うまでもない。
 そこで、日本政府は、こうした事前通報制度が無害通航権を定める国際法との関係でどこまで許容されると判断してきたのか、また、問題があるとして当該国に対し外交的な対処を求めてきたのかを、以下の場合に分けて、質問する。

 軍艦の通航について事前許可を必要とする国の場合
 中国の領海及び接続水域法は、外国の軍用船舶が中国の領海に入る場合には中国政府の許可を必要とすると定めている。
 同様に事前の許可を求める国には、アルバニア、アルジェリア、アンティグア・バーブーダ、バングラデシュ、バルバドス、カンボジア、カーボベルデ、オマーン、パキスタン、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、ソマリア、スリランカ、スーダン、シリア、ベトナムなどがあるが、こうした国の国内法の規定は、国際法違反であるのか否か、また、違反と判断する場合であれ、違反とまでは言えないと判断する場合であれ、その理由も含め日本政府として、どのように考えているのか説明願いたい。
 また、中国等の領海を我が国の自衛艦が過去に通航した際、実際に事前の許可を得てきたのか否か、お答え願いたい。その際、南シナ海や尖閣諸島周辺海域など、我が国が中国の領海であると認めていない海域については、どのように対処してきたのか説明願いたい。
二 軍艦の通航について事前通報を必要とする国の場合
 軍艦の通航について事前の許可までは求めていないが、事前通報を求めている国としては、エジプト、フィンランド、ガイアナ、韓国、インド、マルタ、モーリシャス、セーシェルなどがあるが、こうした国の国内法の規定は、国際法違反であるのか否か、また、違反と判断する場合であれ、違反とまでは言えないと判断する場合であれ、その理由も含め日本政府として、どのように考えているのか説明願いたい。
 また、韓国の領海を我が国の自衛艦が過去に通航した際、実際に事前の通報を行なってきたのか否か、お答え願いたい。その際、竹島周辺の領海については、どのように対処してきたのか説明願いたい。
三 外国の民間船舶等の通航について事前許可を必要とする国の場合
 軍艦以外の外国船舶で、原子力船、核物質・危険・有害物質運搬船の航行について事前の許可を求めている国としては、エジプト、イラン、オマーンの三国があるが、こうした国の国内法の規定は、国際法違反であるのか否か、また、違反と判断する場合であれ、違反とまでは言えないと判断する場合であれ、その理由も含め日本政府として、どのように考えているのか説明願いたい。
四 外国の民間船舶等の通航について事前通報を必要とする国の場合
 中国では、二〇二一年四月二十九日の全国人民代表大会で可決された海上交通安全法の改正(同年九月一日施行)により、「海上交通の安全に危害を及ぼすおそれ」のある外国籍の船舶に対し、領海に入る際の事前報告が義務付けられた。そうした事前報告の対象となる船舶としては、(1)潜水機、(2)原子力船、(3)放射性物質又はその他の有毒・有害物質を輸送する船舶、(4)法律、行政法規又は国務院が規定する、中華人民共和国の海上交通の安全を脅かす可能性のあるその他船舶とされ、違反者に罰金を科すことができるとしている。
 そこで、こうした中国国内法の規定は、国際法違反であるのか否か、また、違反と判断する場合であれ、違反とまでは言えないと判断する場合であれ、その理由も含め日本政府として、どのように考えているのか説明願いたい。
 次に、二〇二一年四月三十日、加藤官房長官は、記者会見で、この中国の海上交通安全法の改正について、「政府としては、本法の施行によっては、わが国を含む関係国の正当な権益が損なわれることがないよう、関連する動向を含め、引き続き注視をしていく考えでありますが、中国側に対しては、こうした考え方について、昨日、外交ルートを通じてしっかりと申し入れを行ったところであります。」と述べているが、どのような場合に、「わが国を含む関係国の正当な権益が損なわれる」リスクがあると考えているのか、説明願いたい。
 さらに、軍艦以外の外国船舶について、同様に事前の通報を求める国としては、原子力船についてジブチとイエメンが、また、原子力船、核物質、危険・有害物質運搬船について、パキスタンとアラブ首長国連邦があるが、こうした国の国内法についても、中国の海上交通安全法の改正と同じ評価であるのか否か、違う場合には理由も含め説明願いたい。
五 我が国が事前通報制度を活用する可否について
 二〇一六年八月に、二百~三百隻の中国漁船が尖閣海域に侵入するという事件が発生した。現在、フィリピンの排他的経済水域内にも多数の中国漁船が居座り続けるという事件が起こっているが、こうした事態に対処するための最も効果的な方法は、自国の領海や接続水域等にそうした漁船が入る前に、侵入を阻止することであると思われる。
 そこで、カナダでは一定の水域を設けて、そこへの入域に際し、事前通報を義務付けていたり、米国、カナダ、ニュージーランドでは、外国漁船が自国の排他的経済水域に入域する際に、事前通報を義務付けているが、我が国も同様な事前通報制度を設けて、「沿岸国の平和、秩序、又は安全を害する」懸念がある漁船が領海等へ侵入するのを阻止するために活用すべきと考えるが、政府として、こうした考えをどう評価するのか説明願いたい。
六 海洋環境保護に事前通報制度を活用する可否について
 オーストラリアは、国際海事機関(IMO)の特別敏感海域(PSSA)制度の指定を受けているグレートバリアリーフ海洋公園について、船舶に事前通報を義務付けているが、こうした海洋環境の保護のために、船舶に事前通報制度を義務付けることを、政府としてどのように評価するのか説明願いたい。

 右質問する。