外国干渉防止法の提案

 

中共の改正「反スパイ法」が23年7月1日から施行された。

 

 改正法は、スパイ行為の定義を拡大。従来の「国家機密の提供」に加え、「国家の安全や利益に関わる文書、データ、資料、物品」の窃取などを新たに対象とした。「国家の安全や利益」の定義は不明で、あいまいにされている。 摘発に当たる国家安全当局の権限も強化され、スパイ行為の疑いがある個人への手荷物検査を可能としたほか、「国家の安全」に危害を与え得る国民の出国や、外国人の入国を禁じている。

現在、日本人17人がスパイ行為の理由も明らかにされないまま、拘束されており、裁判は非公開で行われている。有罪となった場合、最長15年の禁固刑が科される。

わが国もこれに対抗して、中国人スパイを17人以上逮捕、拘留しうる法律を早く制定しなければ、侮られるばかりか、人質の交換もできなくなる。

 

中共の工作活動は、国家機密の窃取だけでなく、外国での警察活動、経済的脅迫による内政干渉、賄賂やハニートラップによる政治家への影響力の拡大など多岐にわたっているので、我が国もこれらを防止しうる広範な対策法を制定しなければならない。

 

 

この点、オーストラリアが2018年に制定した「スパイ活動及び外国の干渉を防止する法律」は、我が国にとって大変参考になる(foreign espionage and foreign interference act)

 

この法律では、「国家の安全保障」の定義が明確に定められており、国家の安全を阻害する行為に対して、最長20年の禁固刑が科される。予備罪と過失罪も規定されている。

これを参考にして、日本版の外国干渉防止法を作るとすれば、以下の素案が考えられる。なお、英国もこれに類似した法律を制定すべく準備中である。

 

 提案理由説明

近年、外国勢力が、巧妙な手法で我が国の政治、経済、社会、教育、研究、放送等の分野において干渉を加え、不当にもその影響力を増大させようとしてきている。その工作活動は、既存の法律では有効に防止することができないものが少なからずあり、我が国の安全、民主的な運営、又は自主的な政策等を確保するうえで看過できないものとなっている。よって、この外国干渉工作防止法を制定しようとするものである。

 

外国の干渉工作の防止に関する法律(案)

(目的)

1       

我が国における民主的な政治運営、自主的な政策の実施又は正当な権利の行使もしくは義務の履行に影響を及ぼそうとする外国の工作活動を防止するに必要な事項を定め、もって我が国の安全及び主権の確保を図ることを目的とする。

 

 

(定義)

2       

この法律において、外国主体とは外国の政府、政党、法人、団体又は国民をいう。

2 この法律において、代理人とは外国主体から活動資金その他の便宜を受けて活動する者又は外国主体の指示により若しくはその意向を反映して活動する者を

いう。

3 我が国に居住する外国人で当該国の法令により我が国における情報収集又は我が国に対する国防協力の義務を負っている者は、前項の代理人とみなす。

 

(禁止行為)

3

 外国主体又はその代理人は、公開又は非公開を問わず、我が国における民主的な政治運営、自主的な政策の実施又は正当な権利の行使もしくは義務の履行に影響を及ぼそうとする工作活動で以下の各号に掲げるもの(以下「干渉工作」という)を行ってはならない。

 

 

      防衛業務の運用状況に関し情報を収集し又はその円滑な運用を妨害し若しくは円滑な運用に支障を及ぼす干渉工作

(防衛施設の出入りの監視、通信傍受、風車によるレーダー監視の妨害、バックドアによる侵入などが含まれる)

 

      警察業務の運用状況に関し情報を収集し又はその円滑な捜査を妨害し若しくは円滑な捜査に支障を及ぼす干渉工作

(警察施設の盗聴、監視、パソコン情報の破壊、バックドアによる侵入、電磁波妨害など)

 

      政令で定める機微技術の研究開発に従事し、または当該技術に関する情報を収集し若しくは移転する干渉工作

(半導体製造、衛星通信、特殊鋼板、個体電池などの情報、国防7大学から39人の留学生による侵入)

 

    海底ケーブル、通信機器又はソフトウェアを用いて、その利用者に関する情報(製品情報として公表されたものを除く)を収集し又は移転する干渉工作

(ファーウェイ、tiktokwechatなどの裏口から侵入し、情報を入手する行為)

 

      我が国の政治、行政又は経営上の自主的な意思決定に影響を及ぼすことを目的として資金を提供し、便宜を供与し、虚偽の宣伝を行い又は精神的若しくは経済的威圧を加える干渉工作

(選挙過程、教育内容の決定過程、国会、政党の意思決定、企業の生産、販売等の意思決定に影響を及ぼす行為)

 

      我が国の教育研究組織又は報道組織に関する情報を収集し又はその自主的な運営に影響を及ぼすことを目的として資金を提供し、便宜を供与し、虚偽の情報を与え、外国主体に有利な情報を流し又は精神的若しくは経済的威圧を加える干渉工作

  (孔子学院、大学理事の買収、報道への干渉)

 

⑦ 我が国の条約上の権利の行使又は義務の履行を妨害し又はそれに対し支障を及ぼす干渉工作

(日米安保条約による義務の履行を妨害するなど)

 

    原子力、通信、交通、水道又は電力にかかる施設の運営を監視し、妨害し又はそれに対し支障を及ぼす干渉工作

(サイバー攻撃による通信麻痺、中国製監視カメラ、電力網の遠隔破壊など)

    宗教団体若しくは少数民族団体又は外国主体に反対する団体及びその構成員の活動を監視し若しくは妨害し、又はその情報を取得し若しくはその自主的な意思決定に影響を及ぼそうとする干渉工作

(中国警察による越境弾圧など)

 

    外国主体又はその代理人による妨害を排除する必要のある安全保障重要地域として政令で定めるものを売買、貸借、保有又は管理する干渉工作

  (水源、農地、離島、レーダー基地周辺を含む、国の安全保障は商取引の自由に関するWTO条約に優先する)

 

    少数民族の居住する地域において強制労働によって生産された物でないという立証のない商品を輸出し、輸入し又は販売する干渉工作

(強制労働による安価な商品が、日本の商品を駆逐するのは不公正であり、経済安全保障上も許せない)

 

⑪ 外国による日本領土の侵入、管理又は支配を歓迎し又は誘致する発言又は行為を行う干渉工作

(沖縄のデニー知事の中国支配を歓迎する一連の発言、中国の民間軍事会社など)

 

第4条 

前条の規定に違反したものは、10年以下の禁固若しくは500万以下の罰金又は併科を科する。

2 前条の未遂は罰する。

3 過失により、前条の罪を犯した者は、3年以下の禁固又は200万円以下の罰金に処する。

4 前条の規定は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用を妨げない。

 

 第5条 第3条に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、5年以下の禁固に処する。

 

第6条 第3条に規定する行為の遂行を共謀したものが自首したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

 

7 第3条の罪は、日本国外において同条の罪を犯した者にも適用する。

 

(国庫補助金の不交付)

第8条 3条第6号の干渉工作を排除するための内部措置(政令で定める)を講じていない研究教育組織または放送組織に対しては、有効な排除措置が講じられたことが政府により確認されるまで国庫補助金又は交付金の交付を停止する。

(孔子学院による干渉行為を放置している大学等には、補助金の交付を停止する、中国韓国による放送圧力を放置しているNHKも同様)

 

   (適用上の配慮)

9

この法律の適用に当たっては、日本国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。

 

 

附則

干渉工作者が外国の政府若しくは政党又はそれらの支配下にあるものである場合は、適切な対抗措置を講じるものとする。

(リチウムの輸出停止、日本人の拘束等に対し、工作者の逮捕、金融機関との取引停止、ビザの発給停止、資産凍結、日本国内にある中國政府高官の個人資産の発表などの対抗措置を講じる)

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 これまで政府が提案してきたスパイ工作取締法は、特定秘密等の窃取を可罰化しようとするものであったが、工作活動の形態が多岐にわたっている現状では、狭すぎてあまり有効ではない。

上記のように、外国の干渉を防止する法律として構成するのが望ましいと考える。

これに加えて、もっと隠微なロビー活動、宣伝活動を抑止するための外国代理人法を制定し、我が国における代理人の活動を定期的に報告させることも欠かせない。

外国干渉防止法と外国代理人法の二本立てにすると、ほぼ完ぺきな防御態勢が出来上がる。

 

 

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中共の改正「反スパイ法」が23年7月から施行された。

 

 改正法は、スパイ行為の定義を拡大。従来の「国家機密の提供」に加え、「国家の安全や利益に関わる文書、データ、資料、物品」の窃取などを新たに対象とした。「国家の安全や利益」の定義は不明で、あいまいにされている。
 「重要な情報インフラ施設へのサイバー攻撃」の実施や指示も「スパイ行為」と明記。
 摘発に当たる国家安全当局の権限も強化され、スパイ行為の疑いがある個人への手荷物検査を可能としたほか、「国家の安全」に危害を与え得る国民の出国や、外国人の入国を禁じている。

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新任の駐米中国大使である謝鋒氏は、在米華僑や中国人留学生向けの公開書簡を発表し、中国共産党に奉仕するよう呼びかけた。専門家は、在米中国人は誰しもが党の目的を達成するため「工作員」にされるリスクがあると指摘している。

23年5月23日に着任したばかりの謝鋒氏は、英語と中国語で書簡を発表した。「米国の同胞たちへ」と題した在米華人向けの手紙では「血は水よりも濃い」と記し、民族意識や愛国心を喚起した。このほか大使館への訪問を誘った。

留学生向けの別の手紙には「愛国心を持って祖国に奉仕し、団結して大使館と協力する」よう要求した。さらに「米国の友人には中国の物語を伝え、米中関係の改善を助ける」ように促した。

米下院の超党派議員らは23年2月、中国共産党から経済的威圧に直面している同盟国に迅速な経済支援を提供し、中国の責任を追及する法案を提出した。貿易を利用し、日本を含む同盟国やパートナー国に政策を変更するよう圧力をかける中国をけん制する狙いがある。(大紀元による)

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「2023年経済的威圧対策」法案は下院規則委員会のトム・コール委員長やグレゴリー・ミークス議員らが提出した。

法案は、中国から経済的威圧を受ける同盟国とパートナー国に対する対外援助、輸出金融、政府系融資の保証を支援するため、議会の予算計上を求める。また対象国との貿易促進に向け、輸出許可決定と規制プロセスを迅速化するほか、対中輸入品の関税を引き上げるといった内容が盛り込まれている。

コール氏は声明のなかで「中国共産党の威圧行為は世界大戦以来、経済的繁栄の礎となってきたルールベースのシステムに逆行するものだ」と指摘。法案は「こうした悪質な行為に迅速に対応するための新たな権限を大統領に与え、同盟国を支援するとともに、中国に打撃を与える」と意義を強調した。

中国共産党は、同党が好まない主権的決定を下した国に報復措置を取ってきた。豪州が新型コロナウイルスの発生源調査を求めたことで豪産ワインへの制裁関税を課したほか、台湾産パイナップルの輸入を停止した。2010年9月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件などをきっかけに、日本もレアアースの対日輸出制限を受けた。(以上、大紀元ニュースによる)

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EUは、23年6月に経済安全保障戦略を発表。中国の経済的脅迫、企業買収、港湾の排他的利用、補助金に支えられた集中豪雨輸出等に対する対抗策を講じることを提案。