外務省改革法

 

わが外務省には、世界に例を見ない特異な外交文化、外務省文化がある。これまでに、露見した数々の事例をもとにそれを整理してみると次のようになる。

  1. 外交官は、日本の国益を堂々と主張して緊張や摩擦を招くような外交を展開してはならない。周囲の大国や口うるさい国の意向に沿うよう、波風たてない外交が最良であり、摩擦に弱いわが外交官の実力にもっともふさわしい。(慰安婦問題、南京事件など、反論しない外交、阿諛追従する政策をもって最良の外交とする文化)

  2. 外国と対立する事案は表面化しないよう、問題を覆い隠すか、または解決を先延ばしにし、面倒な事案に在任中は巻き込まれてはならない。(竹島、尖閣など、解決は後輩に任せ、自らは責任をまぬかれるのが最高の外交官である)

  3. 職務遂行に関し相手国から不当な批判を浴びた外交官であっても、摩擦を招いたというそれだけの理由でもって左遷させなければならない。(ドイツは、中国から批判された外交官を栄進させたが、外務省は唯々諾々と左遷させる特異な文化を持っている)

  4. ODA(政府開発援助)は、外務省およびOBの利権であり、無知な政治家を篭絡するための最良の手段であるから、この拡大に努めなければならない。

    したがって、たとえ、それが国益に反する援助であっても、非効率で無駄の多い援助であっても、その有効性を検証してはならず、検証させてもならない。

  5.  自虐史観に立って謝罪し、援助することによって外務省の利権を拡大するとともに、外交しているというふりを無知な国民や左翼ジャーナリズムに示すことができる。したがって反日教育を展開している国に対して、援助を停止するのは外務省の省益に反する行為であって、あくまでも国益よりも省益を優先させなければならない。(教科書の近隣諸国条項、慰安婦の日韓合意援助など)

  6. 政治家も報道記者も英語が満足に読めない。よって、英語の声明では、明確に謝罪して相手国の意向に沿うこととし、日本語の声明ではあいまいな表現にとどめておくこと。(日韓慰安婦合意では、英語の声明では、軍の関与を認めた表現になっているが、このことに記者も政治家も気づいていない。馬鹿な連中にはこれで良いのだ。またTPPの英文も全訳せず、都合のよい箇所だけ訳せばそれで足りる。条約の正文は、英語とし、日本語にしてはならない。)
  7. わが外務省は、米国務省の出先機関であるから、たえず米の歓心を買う外交官を出世させなければならない。また、占領軍は進駐軍と、連合国機構(UN)は国際連合と、日本構造障壁協議は、日米構造協議と意図的に誤訳してごまかし、米側に有利なように運ぶ必要がある。
  8. 外務省の報道官は、中国の報道官のように詭弁を弄するレトリックを駆使する能力に乏しいので、外国記者向けに対外発信させてはならない。報道官は、国内の記者向けのブリーフィング(背景説明)と便宜供与に専念させるのが賢明である。(国内記者の評判のよいことが、出世の一大要件であるから)
  9. 大使館や邦人に危機が及んできた場合には、大使館員はいち早く逃走し、抵抗せず、抗議は後回しにしなければならない。したがって、危機を予見したときは、大使は誰よりも早く一時帰国し、恒例の診察(メディカルチェック)を受けることとする。(クウェート、イラク事件の対応ぶりをみよ)

  10. 外交の機密費はうまくごまかし、交際費という名のもとに遊興、着服し、あるいは海外旅行する政治家を夜の接待に誘うことをもって賢明な外交官とみなす。赤信号もみんなで渡れば怖くないことを心得よ。(平成22年に発覚した松尾5億円横領事件のおこぼれに預かったキャリア外交官は今も栄達を極めている)

  11. 機密費横領、ハニートラップ、収賄など不祥事案は、組織全体でかばいあい、決して外部に漏えいしてはならない。万一、露見した場合は信賞必罰してはならず、穏便にかたづけなければならない(さもないと、罰せられた外交官、事務官はほかの余罪をしゃべりだす危険があるから)

  12. 外交機密が漏れ、あるいは外交暗号を解読された恐れが大きい場合でも、決してこれを上司に内部通報してはならず、相互に黙認し、責任を逃れなければならない。(妓生接待などハニートラップは、男の勲章であり、それによって国益が侵害されても、公表によって省益を棄損されるよりもましである。ニュージーランドの通信傍受機関が外務省の暗号を解読して、英米豪加に渡しているが、それは見て見ぬふりをしなければならない。)

  13. 現憲法のもとでは、外交権は内閣に属しており、その一部を外務省がになっているにすぎないが、外交の内閣一元化を認めてはならない。あくまでも、外務省のもとでの一元化を主張し、外交権を独占し続けなければならない。国益よりも、省益が重要なのである。

 

 

13.省内および大使館内の防諜や職員の相互監視に努めてはならず、相手国が機密情報を盗みやすいように警戒を解いておかねばならない。スパイ工作に対してはオープンな態度で臨むのが、鷹揚な大官の態度である。(セキュリティ・クリアランスという機密情報に接することのできる欧米の資格審査制度は、外務省にあってはならない文化である。なぜなら、厳格に運用すると、誰一人機密情報を扱うことができなくなるからである。省内、大使館内の防諜対策、ハニートラップ対策も、警察、自衛隊の専門家に任せることを嫌う排他的な文化を持っている。)

 

14.キャリアとノンキャリアの処遇は、絶対的に区別し、能力のいかんにかかわらず、差別しなければならない(さもないと、既得権益が崩壊してしまう)

 

 

以上のような外務省の特異な文化に照らし合わせてみると、外務省改革の法案は次のようなものになるであろう。

 

(外務省改革法の要綱)

  1. 外務省の予算執行及び職務遂行に関して強力な調査権限をもつ外交監査委員会を内閣府に創設し(公正取引委員会と同様のもの)監査と調査に当たらせる。(会計検査院だけでは、足りないことは過去の不祥事案からあきらかである)外交監査委員会は、ODAの有効性と戦略性についても、検証するものとする。

  2. 職員の厳格なセキュリティ・クリアランスを行う部門を創設するとともに、資格審査に当たっては、その都度警察の参考意見を聴取しなければならないこととする。

  3. 省内および大使館内の施設、通信機器の防諜対策および職員の行動監視にあたる常駐の情報警備官をおく。(情報警備官は、専門の警察から出向させることとする)

  4. 防衛駐在官および情報警備官の通信は、外務省の暗号体系と異なるものを使用しなければならない。(外務省の暗号は、ニュージーランドの通信傍受機関がすでに解読したことは、現地の新聞に報道されたことがある。一蓮托生にならないよう、防衛および治安情報は、別体系で送受信しなければならない)

  5. 内部監査制度と内部通報制度を充実させ、機密費の横領、ハニートラップなどの不祥事案に対しては、これを外部に公表し信賞必罰の態度で臨むこととする。

  6. 海外の邦人保護のための危機管理対策を準備し、最悪の事態に備える(大使館、領事館の自家発電装置、食料、水の備蓄、航空機、船舶の手配など)。治安の悪い地域にあっては、自衛隊による防護を依頼し、緊急駐在のための施設を準備しておく。

  7. 省内及び大使館、領事館内のワイン、絵画、応接物件、パソコンなどの財産目録と書類目録を整備し、定期的に確認する。

  8. 電子通信の防御、監視、秘匿、教育にあたる専門組織を設ける。
  9. 内閣人事局は、高位の外交官の登用に当たっては、能力本位で選抜する。奇行癖、女癖、金銭癖のあるものは、排斥する。

以上のことは、欧米の先進国では既に実行している普通のことばかりであって、いまさらながらこの改革を強調しなければならないのは、恥ずかしいことである。