地熱発電の推進に関する法律

 

 火山列島と言われる我が国において、もっとも費用対効果の大きい再生エネルギー源は、地熱である。地熱は、24時間利用でき、運営経費も比較的少なくてすむ。原子力にかわるベース電源として、地熱を活用すべき時期に来ていると思われる。

 ところが、地熱の有望な地域は、ほとんどが環境規制の厳しい国有地(国立公園、国定公園)であり、環境省などの厳しい規制がその有効利用を妨げてきた。近年、国立公園、国定公園にかかる事業であっても、傾斜掘削によれば可能とされたが、事前の環境影響評価は、多岐の項目にわたり、3年以上の期間を要求されてきた。

 また、近隣の温泉業者の反対が、地熱発電の普及を妨げてきた。その結果、これまでの地熱発電は、地表調査の開始から操業実施に至るまで10年以上の期間を要してきた。

 近年、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」 に基づき再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が開始されたが、 固定価格買い取り制度の設備認定の時期を、試験井(噴出試験を目的とした調 査井)掘削開始時点まで早めるなど、設備認定から操業開始までの期間における固定 価格の変動リスクを防ぐ方策が望まれる。 
 もっと速やかにベース電源として地熱発電を普及させるため以下のような推進法を制定する必要がある。

 

(要綱)

1 地熱発電に関しては、事前よりも事後の環境影響評価に重点を置くこととし、その報告を毎年義務付けることとする。(近隣の温泉量の変化、植生の変化など)

2 事前の環境影響評価については、環境省が簡易な評価基準を定め、これを満たしていると認められる場合は

地元との協定書の締結等の建設条件を付して速やかに認可するものとする。

3 事後の環境影響評価をおこなう専門委員会を設け、委員に近隣の自治体首長および住民を若干名加えるものとする。

4 温泉業者との紛争を速やかに解決するための調停組織を内閣府に設ける。

5 地熱発電の建設、運営と温泉湧出量の減少との間に、合理的な因果関係があることを専門委員会が認定した場合は、被害を受けた温泉業者は、調停組織に損害賠償請求または温泉供給のための調停を求めることができることとする。

6 近隣の温泉流出量が減少した場合は、地熱発電に利用した蒸気の一部は近隣の温泉に供給するよう努めるものとする。