水源の保全等に係る森林の土地取引の規制法案

 

平成23年の森林法改正により、新たに森林の土地保有者となったものは、市町村に事後届け出が義務付けられた。また、現在、17の道県で、特定の森林等の土地利用について事前届け出の義務を課す条例が制定されている。

水源の保全その他多面的な機能を有する保安林、および保安林予定森林については、その重要性にかんがみ、土地取引の事前の届け出を義務づけることが急務となっている。

 

1 保安林または保安林予定森林である民有地の土地について、所有権の移転をする契約を締結しようとする場合には、当事者は当該所有権の移転に係る契約を締結する日の農林水産省令で定める日数までに、市町村の長を経由して、都道府県知事に届けなければならないこと。

2 所有権、地上権または賃借権を取得しようとするものは、その実質的な支配者(政令で定める)についても届け出なければならない。(例えば、法人株式の三分の一以上を保有するもの、譲渡制限付きの登記をしたものなどは、実質的所有者とみなす)

3 実質的支配者が、別に定める租税回避地にある場合は、所有権、地上権または賃借権を取得することができない。(正確な情報が得られないためである)

 

3 所要の罰則を設ける

 

 

なお、東京財団では、「日本の水源林の危機~グローバル資本の参入から『森と水の循環』を守るには~」を発表し、国土資源保全というより大きな視点から次のような政策課題を提起しています。

   【要 旨】

 

 日本各地で山林売買が加速している。山間部の土地取引面積は過去10年で倍増した。

 水源となる森林(水源林)は、国の重要なインフラといえるが、現状では売買の実態は  掴みにくい。 

 我が国では地籍調査が48%しか完了しておらず、所有権の移動も十分には把握され  ていない。国土利用計画法に基づく売買届出データも、どこまで実態をカバーしている  か不明だ。 

 

 日本の土地所有権は諸外国に比べて極めて強い一方、公益や安全保障などの観点から、国土資源(土地・森林・水)への投資について直接的に規制する法律もない。 

 

 グローバルな資源争奪戦と国内の林業低迷の中、山林の所有権が海外資本を含む様々な主体に移り、万一、森林が果たす水源かん養や土砂防備機能、あるいは住民の安全・安心に関わる問題が起きたとしても、現行制度下では、国や自治体が直ちに対処することは難しい。 

 

 提言に沿った地籍の確定、山林売買市場の透明化、地下水保全ゾーニング などの対策が急務となっている。 

 さらに、国土資源を将来にわたって保全していくため、重要なインフラの「棚卸し」や新しい社会環境の創造など、幅広い検討が必要である。

 

 

【I.水源林保全のための政策提言】

1. 土(林地)を護る提言 地籍の確定――森林区画整理事業の創設と地籍調査の完了提言 林地市場の公開化――オープンな新市場の創設  提言 国土利用計画法による売買規制と公有林化

2. 緑(立木)を護る

提言  林業再生――森林を手放さなくて済む生産環境の創造

3. 水(地下水)を護る

提言 地下水保全域のゾーニング   提言 地下水を私水から公水へ

 

【II.国土資源(土・緑・水)保全のための総合的課題】

1. 重要なインフラ(施設系インフラ・自然系インフラ)の「棚卸し」

――計画・事業体系の再編集(codification

2. 計画段階での合意形成プロセスの公開化(計画アセスの導入)

3. 新しい社会環境の創造――辺境再生(ムラを捨てたくない社会環境を創る)