外国の人権侵害制裁法(マグニツキー法)

 

アメリカは2012年に、いわゆるMgnitsky ACTを制定した。

これは、ロシアの弁護士マグニツキーが、ロシア税務当局の不正を暴いたことで2009年に逮捕され、翌年刑務所で不当な扱いを受けて死亡した事件を受け、外国の政府等による人権侵害行為と米政府が認定した場合に、資産凍結や入国を禁止する権限を与えた法律である。

米国1国が制裁するだけでは、効果は少ないが、その後、カナダ、欧州議会が制定し、オーストラリアも中国を念頭に置いて2021年に制定すると表明した。

 

我が国は未制定であるが、北朝鮮による拉致、中国による記者の逮捕、拘留などの人権侵害を経験してきた日本としてはもっと早く取り組むべきであった。2021年4月に、日本版のマグニツキー法を求める超党派議員連盟が発足したが、政府自体がもっと積極的に取り組むべき課題である。

 

特に、ウィグルの強制収容所で、多数のウィグル人が強制労働、強制洗脳を受け、避妊手術を強制されている状況、そして香港で言論、表現の自由の侵害が激しさを増している状況下で、同法の制定は急務と思われる。

制裁措置としては、人権侵害に関与した政府当局者や関係法人に対し、日本の銀行システムの利用の禁止、日本における資産の凍結、渡航の禁止、ビザの取り消し、製品の輸入の禁止等が想定される。また、北朝鮮については、その代理人(朝鮮総連、朝鮮商工会等)の資産凍結、渡航禁止などにも拡大しなければ、効果は少ないとみられる。

 

拉致抑留対策法(上記)と一体化させた法案も至急検討すべきであろう。

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中国政府による人権侵害の報告が相次ぐなか、米欧は強制労働製品の排除をはじめ対中貿易では硬派に姿勢を傾けている。22年のG7貿易相会合が行われた9月、欧州委員会は、強制労働により生産された製品のEU域内での流通を禁止する規則案を発表した。強制労働が関わった製品をEU市場に流通させたり、EU域外に輸出したりすることを禁止する。

米国では、「ウイグル強制労働防止法」が6月施行された。同法は新疆ウイグル自治区からの輸入品が強制労働で生産されたものではないと企業が明白に証拠を示すことができない限り、輸入を原則禁止する。

同地域の強制労働廃絶のために活動する「ウイグル強制労働停止」によると、世界のアパレル産業の綿製品の5分の1は新疆の強制労働に関わると推定されている。

また、世界的に需給の高まる太陽光パネルの材料となる多結晶シリコンを製造する世界大手5社のうち4社が新疆にあり、人件費を考慮しないウイグル人収容施設での製造が行われていると、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が21年に指摘している。