疫病の蔓延防止のための強制措置法(ロックダウン法)

 

海外では、疫病対策として、強制的に移動の制限、営業禁止、所持品検査、自宅軟禁などを行う法律があるが、わが国では未整備のため、要請しかできず、したがって政府の補償も満足に行われてこなかった。政府の補償を伴う強制的な立法措置が望ましいが、どのような形が良いであろうか。

 

警察法において緊急事態宣言に関する規定がすでにあるので、「治安」を広義に解し、疫病の蔓延防止も治安とするならば、「国民の福祉」のためにこの規定を活用するのが、国民と議会を説得するうえで好ましいと思われる。(「治安」を狭義に解するならば、別個に独立の法律を作ればよい。これは、現憲法上も「公共の福祉」の観点から容認されることである)

 

 警察法 第71条

「内閣総理大臣は、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について緊急事態の布告を発することができる。
(2) 前項の布告には、その区域、事態の概要及び布告の効力を発する日時を記載しなければならない。」

 

そこで、次の法案要綱を作ってみた。

 

1 国民の生命、身体の安全を守るため、緊急に疫病の蔓延を防止する必要があると内閣総理大臣が認めた場合は、内閣総理大臣は警察法第71条に基づき、区域及び期間を定めて緊急事態を発令することができる。この場合において、厚生労働省の意見を事前に徴するものとする。

 

2 緊急事態を発令した場合において、内閣総理大臣は、都道府県警察に対し、宣言された区域及び期間において次に掲げる権限を行使することを許可するものとする。許可した場合において、内閣総理大臣は警察庁長官を指揮監督するとともに、国民に対し十分な補償措置を講じるよう財務大臣に指示するものとする。

 

 ① 疫病の発生源および蔓延状況に関する必要な情報を収集すること

② 区域と時間と対象を定め住民、車両の移動を禁止または制限すること

③ 区域と時間を定め映画館、劇場、飲食店その他不特定多数が集合する集会場を閉鎖すること

④ 区域と時間を定め集団的示威行為または大規模な催事を禁止または制限すること

⑤ 空港、港湾その他重要施設の封鎖または立入り制限、貨物の搬入出の禁止または制限をおこなうこと

 

 ⑥ 裁判所の令状の下に、身体検査、所持品検査、または一定期間内の身体の拘束をおこなうこと 

⑦ 裁判所の令状の下に、疫病の発生源にかかる貨物の解包、輸送の停止、押収を行うこと 

⑧ 裁判所の令状の下に、区域内の土地を強制使用すること

 ⑨裁判所の令状の下に区域内の家屋その他の施設、器具、機械または動植物を没収、破壊、分解または徴用すること

 

3 前掲の都道府県警察の権限の行使は、疫病被害の拡大を防止するに合理的に必要な範囲にとどめるものとする。この場合において、自治体、国民および企業、団体は、都道府県警察の活動に協力しなければならない。

 

 

4 移動の制限または施設の閉鎖命令を受けた者で特段の事情のあるものは、裁判所に異議を申し立てることができる。この場合において、裁判所は三日以内に判断を下すものとする。

 

5 緊急事態を発令する場合において、内閣総理大臣は、事前に衆参両院議長にその旨を通知するものとする。

 

6 緊急事態宣言の期間は半年以内とし、国会の承認を得てこれを延長することができる。

 

7 違反行為に対し所要の罰則を設ける