非核三原則の見直し決議へ

                  ――三段階で見直し廃止するシナリオ

 

衆参両院は、核拡散防止条約批准の際に(一九七六)、次の非核三原則の附帯決議を採択しています。

「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずとの非核三原則が国是として確立されていることにかんがみ、いかなる場合においても、これを忠実に遵守する」

 

また、一九七八年には、衆議院で、第一回国際連合軍縮総会に関連して、「非核三原則を国是として堅持する我が国」という表現を含む国是決議を採択しました。さらに、核軍縮に関する衆議院外務委員会決議(一九八一)、第二回国際連合軍縮特別総会に関する衆議院本会議決議(一九八二)及び参議院本会議決議(同年)においても同様の決議が繰りかえされています。 

 

しかしながら、これらの決議は、西太平洋において米軍が圧倒的な軍事力を持ち、その抑止力に対して国民も政府もなんら疑わなかった牧歌的な時代に決議されたものであり、戦略環境が激変した今日の状況では、再考を求めざるをえないのであります。

 すなわち、中国の核兵器保有数が劇的に増加し、弾道ミサイルの精度と距離が飛躍的に伸びており、これを背景に、中国軍が太平洋を東西に分割管理しようという政策を遠慮なく公表するまでに至っています。さらに北朝鮮の核保有が現実のものとなり、我が国に対する直接的な脅威となってきていることはご承知のとおりです。

それに反比例するかのように、米軍の抑止力は低減し、日本防衛への関与も信頼性が低下してきています。特に今後、北朝鮮が米国本土まで届く弾道ミサイルと小型の核弾頭を手にすれば、日本が北朝鮮から攻撃を受けた場合でも、米国は自国への報復を恐れて反撃をしない可能性が増大することは否定できません。

 

そこで、今後のわが国の核政策として、三つの案が浮かび上がってきています。

 

    第一案は、非核三原則をすべて廃止し、日本が行動の自由度を確保しておくというもの。廃止したからと言って、直ちに核兵器を保有するわけでなく、将来、近隣諸国が核攻撃の威嚇を加えてきた場合には、核拡散防止条約から離脱することができるという条約上の規定があるので、万一の事態に備え、あらかじめ廃止しておくというものです。

 

例えば、二〇二一年七月十一日、中国の動画サイトで台湾有事に日本が参戦した場合、中国は核攻撃を行い日本を平定するという動画が掲載されました。これは削除されなかったので、中国当局の承認を得ていたものとみられます。

このような核攻撃の威嚇を受けた場合、直ちに核拡散防止条約の規定に基づき同条約から離脱する権利を保留するという表明をしておくべきでしたが、当時の管内閣はまったく無関心でした。

また、北朝鮮の労働新聞は、日本は核攻撃によって海に沈めることができると表明し、再三我が国の近海においてミサイル実験を行ってきています。こういう核の恫喝が発生した場合は、その都度、直ちに核拡散防止条約から離脱する権利を持つがその権利行使を「保留する」と言明すべきであり、国民に対しても離脱権があることを知らしめていくことが必要とおもいます。

 

    第二案は、非核二原則に変更し、米軍の核を常時持ち込み、または臨時に持ち込ませ、抑止力を高めるべきというもの。現状でも、核兵器を搭載しているはずの米海軍の原子力潜水艦は、たびたび我が国に寄港していますから、事実上は非核二原則として運用しているわけです。現在、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギーは米国から戦術核のシェアリングを受けて国内に配備しており、我が国もシェアリングに備えて、二原則に変更しておこうというものです。

米軍は戦略核の保管は国内に限定していますからシェアリングの対象となる核兵器は、当然のことながら戦術核となります。 この戦術核は、探知されにくく移動が自由の潜水艦や爆撃機に搭載することになるでしょう。陸上の固定配備では、かえって住民の不安が高まる恐れが残るからです。

 

    第三案は、当面は、静かにして置き、代わって、「中長距離ミサイルの開発、配備を促進する国会議決」を急ぐというもの。 三原則見直しに関する国内の賛同を得るまでに相当の時間がかかるので、その間に、中国や北朝鮮の弾頭ミサイルに対する抑止力と防御力を高めておこうという狙いです。

これには、日本に飛来する敵ミサイルを迎撃するミサイルと敵基地を攻撃するミサイルと二種類あるが、両方ともに促進する必要があるのは言うまでもありません。核兵器を開発する前に、それを運搬する手段の開発を急がねば意味がないのです。従って、今後開発する潜水艦や爆撃機の設計は、戦術核ミサイルの搭載を可能にするものに当初からしておかねばなりませんね。

 

以上のように見てくると、現実的なシナリオとしては、まず、の中長距離ミサイルの開発、配備を促進する国会決議を急ぎ、内外の政治情勢をみて、速やかにの順で決議をしていくのが賢明ではないでしょうか。

 

なお、防御用中短距離ミサイルの開発整備は、営々と進められていますが、合わせて、ミサイルに搭載する電磁波爆弾及び敵ミサイル破壊のための超電磁砲(レールガン)の開発を早急におこなうことが求められています。また、核兵器の開発は当面無理としても、その原理、構造、材料等の研究は可能ですから、研究自体は行っておくべきでしょう。

これらに要する財源は、我が国が持っている膨大な米国債の含み益(約三十兆円)を活用するのが一番手っ取り早いことは言うまでもありません。財務省は、従来の緊縮財政から積極財政に早く転換して貰いたいものです。