日米地位協定の改正を

2018年に全国知事会は、日米地位協定の改正を提言した。

   日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則

として米軍にも適用させること

   事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の権限を明記すること

   米軍人等による事件・事故に対し、具体的かつ実効的な防止策を講じること

公務中の作為、不作為による米軍兵士の犯罪は、米が第1次裁判権を有するとされ、殺人でも公務中と米側が認定する例が多く、日本側に不利な規定となっている。また、交通事故で有罪となっても、帰国し損害賠償が支払われないことが多い。

 

 

知事会の指摘のほかに、駐留経費の過重な負担割合、日米合同委員会の問題(NATOにはない)などが、山積している。日本は、属国のような形で米軍の権利を最大限まで認めているがこれに対し、ドイツでは、受け入れ国の法令尊重の規定が、1993年のドイツ補足協定改正で強化され、夜間離発着訓練、超低空飛行などは、NATO地位協定により、ドイツの許可が必要とされている。

 

同協定については、『全条項分析・日米地位協定の真実』(松竹伸幸著)にくわしいが、主な問題点は、以下のとおりである。

① 横田空域など、米軍の排他的な航空管制が認められている。その空域では、民間機が米軍の管制を受けるという世界的な非常識がまかり通っている。首都で、クーデターが起きれば、直ちに米軍が鎮圧できるシステムが用意されているともいえる。

 

② 米軍人や、軍属、情報工作員の出入国を日本側は把握できない。したがって、コロナに感染しているか否かの検疫もできない構造となっている。米軍機でスパイが潜入し、赤坂の専用宿舎を拠点に活動していても、日本側は把握できないのである。

 

③ 低空飛行や夜間離発着の訓練は、米軍が自由に行っているが、これは、日本の法令を尊重すべき義務に違反している。有事と平時を日本側が定義し、平時においては、日本の許可を必要とする制度に変えるべきである。

 

④ 米軍人・軍属の公務外での犯罪について、日本が第一次裁判権を有するにも関わらず、これを行使しない言質を米側に与えている。この点は、至急改訂すべきである。

 

⑤ 日米地位協定の冒頭には「すべての経費は・・合衆国が負担する」と明記されているにもかかわらず、特別協定によって、日本側は、地代、施設整備費、労務費まで負担している。そして、施設や労務の定義がなし崩しに拡大されているが、再度、明確に定義しなおすべきであろう。

 

⑥ 米軍は、「必要な電波」を自由に利用できるとしているが、日本の国益を侵害することまで容認したわけではないにもかかわらず、国防省の情報機関は、三沢基地などの電信傍受組織を用いて、日本政府や、企業、政府高官などの通信を傍若無人に傍受している。また、NHKの受信料も支払わないでいる。「日本国の利益を侵害しない範囲において必要な活動」に、米軍の活動を制限すべきであろう。

 

⑦ 地位協定の運用について協議するはずの日米合同委員会は、事実上の決定機関となっており、その決定は公表されていない。合同委員会の結論は、公表するとともに、国会の承認を必要とするよう制度を改訂すべきである。

 

⑧ 以上のように、日本側が強い交渉態度に出られない最大の理由は、財務省がGNP1%枠という防衛費の厳しい制限をいまだにあてはめている点にある。防衛力を増強し、敵国の核ミサイルに対抗する手段を持ち、米軍に防衛を依存する割合を減らしていけば、言うまでもなく、日本側の立場は強化される。自立した独立国家としての軍事力の強化を至急求めたい。独立自尊の気概を持ち、属国という汚名を晴らさねばならない。