国会改革は急務

 

いつまで、わが国会は眠っているのだろうか。野党は、揚げ足取りと釣るし上げに終始し、与党は立法能力を欠き、かくして政策を忘れた国会議員は、総評論家となり、惰眠をむさぼっているように見える。

その最大の被害者は国民と国家公務員である。特に、近年、国家公務員の国会に対する失望がはなはだしくなっている。

 

内閣人事局が2019年に実施した「意識調査」によれば、30歳未満の若手男性官僚の7人に1人が「すでに辞職を準備中」又は「1~3年程度のうちに辞めたい」と回答していたことが明らかになった(同女性官僚は10人に1人)。

理由としては(複数回答)「もっと魅力的な仕事に就きたい」が49.4%で最多を占めている。

「日本国と国民に尽くしたい」という志を抱いて難関の国家公務員試験をクリアして職務に就いた国家官僚が失望してしまう。それは、なぜだろうか。

 

国会開会中は議員からの「質問通告」が真夜中にずれ込み、連日、朝まで答弁作成に追われる。

やっと開かれた委員会では「提出法案」についての質問ではなく、関係のない「追求質問」の連続。

提出法案についての質問であれば、回答の準備はやりがいがあるが、ほとんど無関係な揚げ足取り、つるし上げの質問まで、回答を作らされたのではたまらない。せっかく副大臣が、設置されたのに、彼らは表舞台に立とうとはしない。さらに、野党の国会議員から会館に呼び付けられては恫喝を受け、選挙で選ばれているわけではない議員秘書からもぞんざいな扱いを受け、振り回される。

 

以上の経緯にかんがみ、

国会運営に関しては、以下の改革を望みたい。

 

① 質問通告は前日の午後1時までに行うことを議院規則で定めること。通告されなかった質問への回答は、後日文書回答することを認めること。

 

② 委員会では、質疑は法案または政策の審議に限定することを議院運営規則で定めること。それ以外の質問は受け付けない権限を委員長に与えること。

 

③ 議員室に政府職員を呼びつけることは禁止する旨、議院運営規則で定める。政府に対する質問等は、事前に各省庁の広報室に対し前広に文書でもって行うことを明記する。

 

④ 委員会の運営は、当該理事会の全員一致を原則としているが、これは野党による審議拒否の口実に使われている。この原則を廃止し、委員長職権による日程の決定を原則とするのが、国会運営を効率的にする。(委員長が動かない場合は、内閣職権で日程を決定する旨、国会法を改正すべきである)

 

⑤ 請願の受け入れは、当該委員会の全員の同意が必要という慣行がまかり通っているが、これは、過半数原則に違反している。民意を早く反映するため、議院規則で過半数の決定を明記すべきである。

 

 以上のほか、議員運営委員会(25人)が、55年体制のもとで築いてきた不透明な慣行が残っていると思われるが、それらをあぶりだし、メスを入れなければ、いつまでたっても、国会審議は深まらず、国民の失望を招くだけであろう。

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国会の立法機能の強化については、以下の改革を望みたい。

 

① 所定数の議員の賛同をえた議員立法法案について、自民党は、慣例として、党部会の事前審査についで、政調審議会、政務調査会及び総務会の事前審査(全員の同意が必要)を行っており、さらに幹事長と国対委員長の同意をえないと衆院事務局に付託できない慣例となっている。これが著しく、議員立法の意欲を阻害している。丁寧にこの手続きを踏んでいると、間もなく総選挙が迫ってくるのである。

 

したがって、自民党及び各党は、党規則を改定し、党部会の事前審査(過半数の可決)を経たものは、衆参事務局に付託できるようにすべきである。。そうすれば、委員会に早く付託でき、自由な議論を展開しやすくなる。委員会に付託している間に、党の政調審議会、政務調査会等の審査を並行して進めることができる。(この場合、多数決によること)

委員会審議においては、各議員の自由な討論を認め、採決の段階で党の拘束をかけることにする。そうすれば、逆に採決までに、党内の結論を急ごうという動きになり、法案の成立の可能性が高まる。

 

現在、委員会における事前審査の段階で、自民党の議員には党議拘束がかけられ、これに違反すると処分が下される慣例となっている。しかし、これでは自由な議論が封じ込められる恐れが大きいので、自由に議論を尽くした後、委員会における採決の段階で党議拘束をかけるよう党規則を明確にすべきである。(英国は、この立場である)

 

国会決議についても同様に手続きの簡素化を図らなければならない。

 

 議員法案および国会決議案の審議を促進するため、まず自民党は党則を次のように改正してはどうか。

*政務調査会の各部会において三分の二以上の賛成を得たものは、政務調査会に付託することができる。(全員の同意という慣例を改める)

*政務調査会の審議を始め、過半数の賛成をもって政務調査会の決定とする。政務調査会の決定をもって党の決定とする。(この過程で政務調査会長は、総務会長及び幹事長の同意を得ておくことは言うまでもない)

*政務調査会で決定された議員法案および国会決議案は、直ちに衆参委員会に付託することができる。

*議員法案や国会決議案は、野党の同意を得ないと委員会に付託できないという55年体制下の慣例があるようだが、これだと全く国会は動けないことになる。そういう悪しき慣例から、自民党は脱退するという通告を国会対策委員会で表明すればよいだけの話である。多数決の民主制を国会は、踏みにじってはいけない。

 

*衆参委員会の採決の段階で、党議拘束をかけるものとする。(審議の段階では、党議拘束をかけず、自由に意見を述べさせる。これは英国の方式)

 

*党に立法局を設け、議員法案及び国会決議案の審議の補佐に当たるものとする。

 

③ 会期不継続の原則が、国会法68条に定められているが、一日2億円の国会運営経費とそれ以上の時間コストが掛かっていることを考慮すると、会期継続の原則に変更すべきと考える。

 

④ 国会の立法補佐機関(衆議院調査局、 参議院常任委員会調査室、 衆参法制局、 国立国会図 書館調査及び立法考査局) を統合し国会立法調 査院を国会に設置すること。これにより、各議員による立法を適時に補佐することができるようになる。現在の国会の補佐体制では、各議員による立法提案までは手が回らないのが実情。

 

⑤ 立法事務費の使途を領収書を添えて報告する義務を負わせる法律改正を行うこと。自民党には年間29億円、野党にも十数億円の立法事務費が与えられているにもかかわらず、それらは立法のためではなく、選挙や一般政治活動に使われている現状は改めなければならない。

 

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 なお、これまで、非効率な国会運営の改革に向けて、幾多の案が出されてきたが、与野党によってうやむやにされて来た。たとえば、以下のような提案がなされたことがある。

 

① 衆議院改革に係る諸問題については、衆議院議会制度に関する協議会(以下「議会制度協議会」という。)が、昭和41年3月の議院運営委員会の決定により設置された。

これまで、「政治倫理基本法を制定し、国会議員の政治的道義的責任の所在を明確にし議員活動の公正性と透明性を高めること」、「議案審査と疑惑解明を共に進めるため、国会議員の疑惑がある時は、政治倫理審査会を活用すること」などが提言されたが、まだ同基本法は成立していない。

 

 ② 平成11年7月には、「国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律」(以下「国会審議活性化法」という。)が成立し、公布された。これにより、政府委員が廃止され、副大臣が設置され、国家基本政策委員会も設置された。(しかし、官庁の負担は軽減されていない)

 

③  民間団体からも制度改革への提言がなされた。  経済同友会が平成4年と9年に 「国会改革に関する意見書」を公表し ており、  議員立法の促進、 国民に見える・ わかる国会の実現等を提案した。 また政治改革 推進協議会 ( 「民間政治臨調」) は、 平成5年に発表した 「国会改革に関する緊急提 言」の中で、 国会中心主義の確立と国会の政 策形成機能の回復、 国会運営の効率化、 開かれ た国会の実現と国会の情報発信機能の強化をう たっているが、まだほとんど具体化していない。

 

④ 注目すべきは、平成14年6月27日に自由党が議員立法 として衆議院に提出した 「国民主導の国政の実 現に関する基本法案」である。 この法案は、 政治主導の政策決定のあり方に関する基本理念 を定めるとともに、 行政機関の職員の国会議員 等への接触の制限、 国会の立法機能・行政監視 機能の強化等の措置を講じて、 国民主導の国政 の実現に資することを目的としている。 この目 的のため、 国会の立法補佐機関 (衆議院調査局、 参議院常任委員会調査室、 衆参法制局、 国立国会図 書館調査及び立法考査局) を統合し、 国会立法調 査院を国会に設置し、 各議院・委員会、 国会議 員を補佐することが提案されている。 同法案は 審議未了となったため、 自由党は改めて第156 回国会 (常会) に同趣旨の法案を提出するが、 やはり審議未了、 廃案となっている。 

 

 政治倫理基本法などすでに諸党から提案された法律を至急制定することを要望したい。