ロビー活動公開法をつくり、国民に見えないロビー活動の実態を知らせよう

 

 中国や、ロシア、アメリカなどの工作機関、商工会議所などは、我が国の議会や官庁、裁判所などにはたらきを強め、政府援助や、規制緩和、税制改正など国策の変更を求めてはたらきかけるロビー活動を展開しています。また、日本国内においても、経済団体、宗教団体、医師会などが、議会や官公庁に対し、組織的なロビー活動(周旋工作)を展開しています。

 

法治の国、アメリカは、これら内外からのロビー活動が政府、議会、官公庁に不当な影響を及ぼすことのないように、ロビー活動公開法(2.USC.1601)を制定して、毎年監視を続けています。

 

 現在、ワシントンには約1万8000人の登録ロビイストがいますが、そのほとんどは法律事務所かロビー専門会社か退職した連邦議員たちです。退職後にロビイストに転じた元連邦議員は、約4割に上ります。年に40億円稼ぐロビー専門会社もあります。彼らは、法案を作って議員に働きかけたり、政府高官を食事に誘ったり、海外旅行の手配をしてやったりといろいろな便宜を図って情報収集、根回しに動いています。

もちろん、国民が政府に請願する行為は憲法上保証されている権利なので、自由に行ってよいわけですが、それが何らかの金銭や貸借、便宜供与と引き換えになされると、重大な問題になります。

 ロビイストが、政府高官などに贈り物、食事提供、旅行の便宜などを提供した場合、その場所、時間、金額、相手方などの明細を報告させることになっています。また、ロビイストが何ら便宜を与えていない場合でも、ロビイストを雇った企業、団体などもその支払い明細を報告しなければならず、ロビイストに年間合計1万ドル以上支払った企業や個人は必ず明細を報告しなければならない決まりになっています。

 

トヨタ自動車の雇っている米法律事務所や、全米ライフル協会、医療団体、韓国人団体などもロビイスト登録しており、年間にだれにいくら報酬を支払ったかを報告しており、その報告書は、ネットで閲覧することができます。全米でロビー活動に支払われた金額は、総計で約2兆円にものぼっています。

グーグルやゴールドマンサックス、全米自動車工業会も登録しており、ロビー活動を委託する宗教団体、商業組合、教員組合なども登録を義務付けられています。

最近の面白い例としては、米のポデスタ・グループの幹部三人(ブッシュ政権、オバマ政権の高官であった)が、ロシアの政府系銀行スベルバンクのロビイストとして米政府に登録したという事例がニュースになりました。これは、米国のロシアに対する経済制裁を緩和させる目的で活動する団体であるということを司法省に登録したのです。

この法律のすごいところは、ロビー活動のすべてがデータベース化され、ネットで閲覧できることです。したがって、トヨタ自動車やライフル協会がどのロビイストにいくら支払ったかを、東京に居ながらにして知ることができます。中国や韓国系のロビイストがどの議員に働きかけたのかも検索することができます。

 

ロビイストが、外国の利益のために行動する場合は、外国代理人登録法の適用も受けるので、「外国代理人」としても登録し、その活動や収支などを半年ごとに報告する必要があります。

 

以下は、アメリカの法制を参考にしてまとめてみた要綱です。このような法律を制定すれば、国民の目の届かない暗闇で行われているロビー活動の大半に光を当てることができ、我が国の民主制も高度化すると思われます。国民の知る権利にこたえる重要な法案です。

(なお、トランプ大統領は2017年1月、連邦政府の職員が退職後5年間ロビー活動を行うことを禁止し、さらに外国のためにロビー活動を行うことを生涯にわたって禁止する大統領令にサインしました。)

 

 

 

公的周旋活動(ロビー活動)の公開に関する法律

 

1 公職にある者(議員、公務員、国立大学関係者など)もしくは公職についていた者に対しまたはこれらの者の代理人(秘書、弁護士、公認会計士など)に対し、業として、その公職の職務内容に関し影響を与えることを目的として働きかけようとする者またはその働きかけを委託しようとする者は、ロビイスト(公的周旋活動者)として、国家公安委員会及び活動する地域の都道府県公安委員会に登録しなければならない。

 

2 ロビイストは、半年ごとにその活動内容(働きかけの相手と内容、報酬、贈り物、食事提供、旅行の便宜供与など)を支払い明細を付して、国家公安委員会および活動する地域の都道府県公安委員会に報告しなければならない。ロビイストにロビー活動を委託した企業、団体も同様とする。

 

3 報告された内容は、官報および公報に公示するとともに、国民が容易に閲覧できるように電脳網に公開するものとする。

 

 4 公職にある者またはあった者が、その公職の職務内容に関し、ロビイストから陳情、請託などの働きかけを受け、または報酬その他の便宜供与を受けた場合は、遅滞なく、国家公安委員会および関連する都道府県公安委員会に届け出るとともに、その所属組織にその内容を報告しなければならない。

5 登録義務、報告義務に違反した場合は、5年以下の禁固または300万円以下の罰金を科する。

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海外腐敗行為防止法(FCPA)

米証券取引委員会(SEC)は23年8月25日、米複合企業スリーエム(3M)が海外腐敗行為防止法(FCPA)に違反した容疑を解決するために、650万ドル(約9億5千万円)以上を支払うことに同意したと発表した。3Mは業績向上を図るため、中国政府当局者に海外旅行を提供していたとされる。

FCPAは1977年に制定された法律で、ビジネスの獲得や維持のために外国公務員に賄賂を支払うことを禁じている。

SECによると、中国に拠点を置く3Mの完全子会社は2014年から2018年まで、会議やマーケティング活動に参加するという名目で、中国当局者の海外旅行、観光、娯楽活動を手配していた。こうした旅行は24回に上り、計100万ドル(約1億5千万円)近くが費やされていた。

観光地はロサンゼルスやナッシュビル、シドニーなどで、当局者の配偶者が参加することもあったという。

また、これらの旅行は中国当局者が出席するイベントに合わせて計画されていた。中国当局者11人が参加した3都市を巡る9日間のツアーでは、公式日程表が「教育イベント」で埋め尽くされていたものの、中国当局者がこうしたイベントに出席することはほとんどなかったという。

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米国上院の超党派議員グループは232月、敵対的国家のエージェントがロビー活動などを通して、米国の政策に影響を与えることを阻止する法案を提出した。

「敵対的影響力、偽情報、不明瞭な海外資金調達の防止法(PAID OFF ACT)」である。法案は既存の外国代理人登録法FARA)の抜け穴を防ぎ、ロビー活動開示法(LDA)の免除を廃止することで中国共産党などによる情報操作を阻止する。中国やロシア、イラン、北朝鮮などのエージェントが対象となる。

米外国代理人登録法は、外国政府のために世論に影響を及ぼそうと試みる機関や個人に米司法省への登録を義務付けている。しかし、ロビー活動開示法の免除を利用してFARA登録を回避するなど、敵対的国家の影響力行使に法律が追いついてないのが現状だ。

マルコ・ルビオ議員やジム・バンクス議員ら保守系共和党議員からは、中国共産党員への10年滞在ビザ発給禁止法案や、中国出身者と共産党機関とのつながりを審査するよう義務付ける法案などが提出されている。

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以下は時任謙作氏による記事

 

-国の持続化給付金に関する経産省の委託費をめぐり、一般社団法人「デザインサービス協議会」から広告代理店大手・電通へ、さらに電通から人材派遣大手・パソナなどへ業務が何重にも外注されていたことが指摘され、問題となっている。

「新型コロナ禍で生まれた利権にまで食い込んでいるとは……彼の常套手段とはいえ、呆れてしまう」

さる政府関係者がこう述べるのは、かねて「政商」あるいは「レントシーカー」と指摘されてきたパソナグループ会長・竹中平蔵氏を指してのことだ。

「レントシーカー」とは、政府や役所に働きかけ、法や制度、政策を自らに都合の良いように変更させて利益を得る者のことをいう。

竹中氏は、東洋大学教授、慶應義塾大学名誉教授といった学識者の肩書に加えて、パソナグループ取締役会長、オリックス社外取締役など企業人としての肩書を持つ。その一方で、安倍政権の成長戦略のアドバイザーとして未来投資会議、国家戦略特別区域諮問会議において民間議員の肩書も持っており、規制緩和や民間委託を推進する立場にある。

竹中氏が旗振り役となって規制緩和を推し進めた先に、竹中氏の利益があるという、いわばマッチポンプ的な構図が出来上がっているのだ。

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以下は、三橋貴明氏による記事

 

 竹中氏のレントシーキングを告発する、ジャーナリスト時任兼作氏の素晴らしい記事です。
 
 時任氏が指摘するように、竹中氏は今回の持続化給付金給付、移民受入、コンセッション方式の水道民営化、東京五輪のスタッフ、空港民営化など、様々な事業、規制緩和に「政治的な影響」を与えた可能性が濃厚なのです。これは、重大な問題です。
 
 理由はもちろん、上記の各事業を「パソナ」が受注しているためです。つまりは、自分が会長を務めるパソナのビジネス拡大のため、政策を歪めた「かもしれない」のでございます。

 問題なのは、竹中氏が未来投資会議などに「民間議員で~す!」と乗り込み、各種の規制緩和を推し進めるのは、別に違法ではなく、さらには国会議員もコントロールできないという点です。何しろ、未来投資会議などは首相の諮問会議であり、構成するメンバーは、別に国会の承認を受ける必要がありません。
 
 すなわち、我々日本国民には、竹中氏を未来投資会議などから追放し、レントシーキングや愚かな規制緩和を食い止める手段がないのでございます。

 本問題は、何年も前から批判を続けてきましたが、ようやく「レントシーカー」といった言葉が多くの人に届くような時代になりました。

 

 


 現在の竹中方式のレントーシーキングは、「法律」により禁じるしかありません。そのためには、国会議員に対し、我々国民が「問題である」との声を届ける必要があるのです。