食品の安全性確保に関する基本法

 

 

 わが国の食品の添加物や残留農薬に関する規制は、欧米にくらべて緩やかであり、またその安全性検査の体制も十分ではない。欧米で禁止されている化学添加物が、その毒性検査を経ないまま多数許容されており、農薬に至っては農薬メーカーの圧力に負け、2015年から大幅に規制緩和され、残留基準値は米国と比べ1.7倍―25倍と高く、EUと比べると3倍―300倍と異常に高い数値のままである。

 特に、有機リン系やネオニコチノイド系農薬は、多動性障害、自閉症などの発達障害毒性を持っているにもかかわらず、農薬取締法で定める毒性試験では発達神経毒性の試験は必須とされていないなど問題が多い。

 わが国の耕地面積当たり農薬使用量は世界で最高の水準にあり、このため海外から輸入する農産物の残留農薬基準値も緩和せざるを得なくなっている状況である。

 

 

 

 また、遺伝子操作された食糧、食品(GMO)についても、米国企業による1年間の動物実験の結果をうのみにするだけで、二世代にわたる影響はもとより、人体に対する2年間以上の影響追跡調査すら実施されていない。わが国は、世界最大級のGMO輸入国で、最大級の消費国でもある。輸入される大豆、トウモロコシ、菜種は、ほとんどGMOであり、中には枯葉剤耐性の遺伝子組み換えなど他国で禁止されているものも含まれている。(その利益は、米国のモンサントなど巨大化学企業に移転されている)。 農薬や遺伝子組み換え食品は、人体に有害であるだけでなく、それに含まれる環境ホルモンが、野生生物に対しても「世界的脅威」となっていることを忘れてはならない。

 

 結局のところ、これまでの食品行政は、添加物や農薬、遺伝子組み換え種子の製造業の利益を優先にして行われ、消費者や子孫の健康や安全は、後回しにされてきたということである。とりわけ、モンサント、デュポンなどの多国籍企業の圧力に対して日本政府は屈服をつづけてきた。今後は、「健康上疑わしきは用いず」という予防原則に切り替え、消費者優先の行政に切り替えていかねばならない。(ところが、これに逆行するかのように、自然種子を保存してきた種子法が2017年に廃止され、遺伝子操作種子の市場が拡大されようとしている。)

 

 さらに、加えて問題を複雑にしているのは、TPPの加盟問題である。TPP協定は、国民の健康と安全と環境を犠牲にして、グローバル企業の利益を最大化しようとするISDS条項を含み、また排ガスなどの環境規制や食品の安全性規制の強化を認めないラチェット規制(強化不可条項)を含んでおり、この意味で国民主権を侵害する新種の治外法権条約といって差し支えない。

 もし、日本政府が、国民の健康確保のために新たに規制を導入すると、直ちに多国籍企業から巨額の損害賠償請求が突きつけられることになっている。よって、TPP条約の批准は、ISDS条項とラチェット規制が削除されない限り、無期延期するという国会の議決または立法を至急行う必要があると考える。(残念ながら、2016年に批准されて、2018年12月より発効してしまったので、今後の二国間交渉において非常に不利な立場に立たされることになった。)

 

 

食品の安全性確保に関する基本法(要綱)

 

 

1 食品の添加物または残留農薬の規制は、「疑わしきは用いず」という予防原則に立つことを宣言する。遺伝子組み換え食品の規制についても、同様とする。

 

2 食品の添加物または残留農薬の規制は、特段の事情のない限り、米国またはEU諸国のうち最も厳しい国もしくは州の規制と同等またはそれより厳しい基準値を採用するものとする。

 

(こうすれば、どこか1国が禁止しているものは、わが国も自動的に禁止し、最も厳しい国の基準値に少なくとも合わせることになる。)

 

 

3 遺伝子操作された食品の規制は、特段の事情のない限り、米国またはEU諸国のうち最も厳しい国もしくは州の規制と同等またはそれより厳しい基準を採用するものとする。遺伝子操作された食品の表示義務についても同様とする。( バーモント州では、「消費者の知る権利」を主張する市民の声が高まり、、201671日にGM義務表示法Act 120が施行された。)

 

 

4 食品の安全性は、輸入、生産または流通の各段階において十分な体制のもとに厳格に検査されなければならない。消費者庁は、その検査状況を定期的に監視し、不十分と認めたときは、国または自治体の関係機関に毒性試験の強化充実等の必要な措置をとるよう勧告を行うものとする。

 

5 消費者庁は、民間で行われる安全性検査の結果を受け付け、これを審査する組織を設けるものとする。民間からの通報により安全性に問題があると判断した場合は、独自にまたは公的な研究機関に依頼して安全性の追跡確認検査を行い、異常または不審な結果を確認した場合は、直ちに使用禁止、再試験の実施等の勧告を行うものとする。

 

6 消費者庁は、毎年、食品の安全性の監視および勧告の状況について報告書をまとめ、これを国会に報告するものとする。

 

(7 この法律の附則において、TPP協定のISD条項およびラチェット規制(強化不可条項)が削除されるまで、TPP協定の批准を無期延期することを明記する。)

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これに合わせて、遺伝子操作(組み換え)食品や成長ホルモンで育てた肉類など人体に対する長期の安全性が確認されていない特定物質の表示義務制度を導入しなければならない。

 

食品の表示に関する法律(概要)

① 人工的に操作された遺伝子を有する穀物またはその穀物を加工した商品を消費者に販売するものは、その穀物または商品の包装の見やすい位置に操作遺伝子を用いている旨を日本語で明瞭に表示しなければならない。

② 穀物の生産者または仲卸は、その販売に当たり、操作遺伝子を用いている場合はそのむね文書で販売先に通知しなければならない。

③ 別表に掲げる成長ホルモン剤(エストローゲンなど)または抗生物質を用いて作られた肉類を販売するものは、その販売所の見やすい位置にその成長ホルモン剤または抗生物質を用いている旨を日本語で明瞭に表示しなければならない。

④ 肉類の生産者または仲卸は、その販売に当たり特定の成長ホルモン剤または抗生物質を用いている場合はその旨文書で販売先に通知しなければならない。

⑤ 所要の罰則を設ける

 

 

米国のGMO表示法(2016)

 

  1. 農務省に対して、全米統一基準の表示ルールを制定することを命じた。今後、農務省は、遺伝子組換え食品と認定される遺伝子組換え品の含有量など詳細ルールを決定する。

  2. 食品メーカーに対しては、遺伝子組換え商品のパッケージに、(1)農務省が定める「遺伝子組換え食品」マークを表示する、(2)遺伝子組換え食品であることを示す文言を表示する、(3)遺伝子組換え食品であることを示すウェブページへのリンクを示すQRコードを表示する、の3つの選択肢のうちいずれかを選択しなければならない。中小企業に対しては、遺伝子組換え食品であるこを示すURLや問い合わせ窓口の電話番号のみの表示でも可とするオプションを用意した。

 

  1. 日本の遺伝子組み換え食品表示の問題点(仲野晶氏による)

 

  1. 「遺伝子組み換え」食品の表示: 8種類の農産物(大豆、とうもろこし、馬鈴薯、菜種、綿実、アルファルファ、テンサイ、パパイヤ)とこれを原材料とする33種類の加工食品のみ

  2. 「遺伝子組み換えでない」食品の表示: 上記8種類以外の農作物に関し表示を禁止

  3. 大半の食品は表示義務の対象外: 醤油、食用油、コーンフレーク、異性化液糖、砂糖などの多くが遺伝子組み換えを含むが、消費者の知る権利は尊重されていない。

  4. 家畜(豚肉、牛肉、鶏肉など)の飼料は表示義務の対象外

  5. 高いGMO混入率(重量で5%未満)でさえ「遺伝子組換えでない」の表示を認めている。

 

5.遺伝子組み換え食品表示の国際比較

 

 

表示の対象食品

原材料・上位品目に限定の扱い

意図せざる混入率を

どこまで認めるか

  日本

大半の食品が表示の対象外

上位3品目(重量比5%以上)に限定

5%以上を表示

EU

全食品表示(スーパーやレストランで全品目義務付けている。表示方法はGMO使用が「有」か「無」の2種類。EUでは遺伝子組換え作物は殆ど流通していない。)

全成分表示

0.9%以上を表示

中国

全食品表示

限定の扱いがない

1%以上を表示

台湾

醤油や食用油などタンパク質が含まれないものも表示

限定の扱いがない

3%以上を表示。0.9%以上への厳格化を目指す