政治家と公務員の関係の規正法

 

国会あるいは地方議会において、実力者(ボス)と称される人物が事実上、行政の一部を牛耳っていることが少なくない。たとえば、都議会においては、都知事を上回るほどの権力をもつボス的な都議会議員がいると報道されている。これらの実力者は、往々にして建設土木の利権を握り、それから得た利益を仲間の議員や官僚に巧みに配り、その力を拡大してきた。議会ボスは、巧みに官僚に接近し、官僚から入札情報などを入手し、建設土木業者にひそかに伝えてその見返りを獲得してきたのである。採用試験や給付金の配布、公営住宅の割り当てなどについても、関係公務員に様々な手段で圧力をかけたり、篭絡したりして有利な成果を上げてきた。

こうした政官の癒着を防止するには、どうすればよいであろうか。

 

イギリスでは、政治家と官僚の接触を原則的に禁止しているので、このような役所に対する口利きという問題は生じない。政治家が陳情する場合は、役所相手ではなく、政務官、大臣や首長に行うことになっている。

我が国では、かつて公務員制度改革の一環として、次のように定められたことがある。

 

 

「職員が国会議員と接触した場合における当該接触に関する記録の作成、保存その他の管理をし、及びその情報を適切に公開するために必要な措置を講ずるものとすること」(国家公務員制度改革基本法第5条第3項第一号)

 

当初の改革案では、政治家と官僚の接触禁止を盛り込んでいたが、国会での修正によって、政治家と官僚との接触を禁止しないが、その記録を作成、保存し、公開することとなった。

 

 

 ところが、安倍政権は、20121226日に政権復帰すると、その日のうちに、「政・官の在り方」という閣議決定を行った。

 

 その閣議決定で、

 

「『官』は、国会議員又はその秘書から、個別の行政執行(不利益処分、補助金交付決定、許認可、契約等)に関する要請、働きかけであって、政府の方針と著しく異なる等のため、施策の推進における公正中立性が確保されないおそれがあり、対応が極めて困難なものについては、大臣等に報告するものとする。報告を受けた大臣等は、要請、働きかけを行った国会議員に対し、内容の確認を行うとともに、政・官の関係について適正を確保するなど、自らの責任で、適切に対処する」

 

 として運用を骨抜きにしてしまったのである。

 

 これだと、もし、官僚が「政府の方針と著しく異なるもの」あるいは「対応が極めて困難なもの」と思わなければ、報告不要となって、記録作成や報告をしなくてよいこととなってしまう。やはり、すべての要請、働きかけ等について、対応の困難性、容易性にかかわらず、記録し、報告し、公表するように法改正すべきであろう。

 また、地方公務員についても、首長に報告するなど同様の規定を設けるべきである。

 

国会議員と公務員の関係規正法(要綱)

 

1 国会議員(その代理者を含む)が、官公庁の職務執行に関し、官公庁に陳情などの連絡をしようとする場合は、原則として、官庁に会っては大臣、副大臣または政務官に対して、公庁にあってはその首長に対して行うものとする。この場合において連絡を受けたものは、当該連絡に関する記録の作成、保存その他の管理を行うとともに、文書管理の責任者に報告しなければならない。

2 国会議員(その代理者を含む)が直接官公庁に問い合わせなどの連絡を行う場合は、当該官公庁の広報責任者に対して行わなければならない。

3 公務員がその職務に関し国会議員(その代理者を含む)から連絡を受けた場合または饗応など便宜供与を受けた場合には、当該接触に関する記録の作成、保存その他の管理をし、ただちにその内容を上司に報告するとともに、当該機関の文書管理の責任者に報告しなければならない。

4 報告を受けた文書管理の責任者は、執務上重要な影響を及ぼす恐れがあると判断する接触について所属機関の最高責任者及び議員の所属政党の代表者に通知するとともに、これを公開するものとする。

5 文書管理の責任者は、一定期間の経過後、公文書館(国、地方)に記録文書を移管するものとする。

6 所要の罰則を設ける