台湾海峡波高しーーー台湾は日本の防波堤

 

 台湾海峡波高し

ーー中共の脅威にどう対抗するか

 

 

 台湾は日本を守ってくれていた

 

中国共産党は、今盛んに台湾にたいして恫喝を加えている。

2020年の年初に、習近平は、「台湾に対する武力行使を放棄しない」と恫喝し、台湾近海で空母の演習を行い、戦闘機を台湾の空域に侵入させるなど、露骨な威嚇を続けている。

 中共の戦術は、「超限戦」である。つまり、軍事力だけでなく、心理戦争、情報戦争、経済戦争、スパイ工作など、もてるすべてを動員する狡猾な手法である。武漢ウイルスの開発もその一環であったと思われる。

 

中共が覇権主義を隠さなくなったのは、オバマ政権の弱腰な姿勢を見てからであった。ウィグル、チベットを弾圧し、南シナ海に軍事基地を築いても、オバマ政権は何ら対抗措置を講じなかった。この米国の軟弱な姿勢を見て、2025年までに台湾を占領し、2045年までに沖縄・尖閣諸島を占領する方針をひそかに決定したのである。

 

 これを察知した米のトランプ政権は、このまま放置すれば、米国自体の安全が脅かされると気づき、広範囲な反撃を開始した。ウィグル人などの安い労働力を使った中国製品に関税をかけ、米の先端技術を盗用するファーウェイなどの通信会社を制裁し、スパイの温床となってきた中国人学者や留学生を締め出した。中国に進出した米企業の国内回帰を促進しようともしている。

台湾に対しても、自由と民主の擁護の姿勢を明確にし、中国の抗議をものともせず、対艦・防空ミサイルを売却した。海兵隊の台湾駐留も検討している模様である。

 

 中国共産党の危険性に気づいたのは、米国だけではない。20年の9月には、チェコの上院議長が訪台し、民主国台湾の人々を支持すると表明した。中国に融和的であったドイツも、共産主義の本質がやっとわかり、恫喝外交を繰り広げる北京政府を厳しく批判するようになった。

 ところがまだ、我が国は中国共産党の覇権主義の恐ろしさに気が付いていないようである。経済界も政界も融和的で、真剣に防衛のため思い切った予算をつけようとしない。尖閣の領海を侵犯されていながら、習近平を国賓として迎えようとする動きも一部に残っている。

 米国の姿勢が決まった今、わが国も旗幟を鮮明に打ち出さないと、自由陣営から見放されることになるだろう。その第一歩は、苦境に立たされている台湾支援の姿勢を強く内外に示すことである。

台湾が占領されると、日本のタンカーや商船の海上輸送が困難となり、わが国の死命が制せられることになるのは明らかである。これまで日本を最前線で守ってくれたのは、台湾なのである。自立した台湾は、我が国の防波堤と言って差し支えない。

 

   日中共同声明は迂回できる

 

現在、日本と台湾の間に正式な外交関係はない。相互に大使館はなく、代表処が置かれているにすぎない。それは、1972年に日中共同声明が結ばれたことによる。

 ところが、この共同声明を注意深く読むと、台湾との関係を強化するのに、全く支障がないことがわかる。当時の日本政府は、将来、フリーハンドが拘束されないように注意深く文言を選んでいたのである。

 

 勉強不足の報道記者は、日本が「一つの中国を認めた」と誤解している。が、日本政府は「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する」と表明しているだけである。「承認」したわけではない。

 米国に至っては、「尊重」もせず、単に中国の主張を「承知している」(acknowledge )と表明しているだけである。

したがって、日本政府としては、自由と民主という価値観を共有している台湾の主張を中国の主張を「尊重する」以上に「尊重する」という余地が残っている。また、そう言ってなんら日中共同声明に違反するものでもない。

また、共同声明では、中共は、日中間の紛争は「平和的手段により解決し、武力または武力による威嚇に訴えないこと」を確認しているが、尖閣領海への侵入にみられるようにこれを全く遵守していない。覇権主義の彼らにとって、共同声明や条約は破るためにあるといっても過言ではない。国力が増大すれば、勝手に破ることができると彼らは考えている。

 

 

つぎに共同声明では、「日本国政府は、共産党政権が中国の唯一の合法政府であることを承認する」とあるが、ここでいう「中国」は明確に定義されていない。したがって、日本としては、「中国」は、「大陸中国を意味する」と解釈する余地が残っている。また、「中国」を「漢字を共通の表記法とする民族が五百年以上居住している大陸中国」と解するなら、ウイグル、チベット、南モンゴルは「中国」の範囲に入らないことになる。

トランプ政権は、あいまいな「中国(チャイナ)」の定義をはっきりさせようとしているようだから、日本も欧州も、米国と足並みをそろえて、定義づけすればよい。共同声明いらい約50年を経過したが、どうやらその時期が近付いてきたように思われる。

だが、日米欧の定義を中国にのませるには、それだけでは足りない。中国に国力の差をはっきり自覚させる必要がある。つまり、海外技術に依存する経済力を弱め、軍事力と警察力を弱体化し、自由と民主を求める中国人民の活動を支援する必要があろう。

そうした試みが成功し、共産党政府が中国人民によって倒された場合は、共産党政府と結んだ日中共同声明はただちに意味を失うのである。ただし、こうした戦略を主導しうるのは、軍事力、情報力と経済力においてまさる米国をおいてほかにない。

 

  台湾関係法を制定しよう

 

 では、これから日本はどのように動くべきであろうか。

 台湾は、軍事的には空母20隻分に相当する価値があるといわれる。もし、台湾が中共に制圧されると、米軍は沖縄を捨てて、グアム島に引き下がらざるを得なくなる。中共のミサイル先制攻撃に即応する時間を稼ぐためである。しかし、その場合、わが国のタンカーや商船の運航は制圧され、戦わずして中共の軍門に下ることになる。

 したがって、現在軍事協力のできない日本としては、国際的に孤立した状態にある台湾を精神的にも経済的にも支援する必要がでてくる。

 すでに米国は、台湾旅行法(2018)により両国の政府高官の訪問を認可し、台北法(2020)により、台湾の国際組織への加盟を推進し、台湾を支援しない国との外交関係を見直すと表明している。

 

 日本として、直ちにできることは、台湾との交流を促進し、関係を強化する国会決議を行い、それを立法化することである。

台湾関係法の草案についてはすでに用意し、議員立法支援センターのサイトで紹介しているが、とりあえず、支援を意思表示する国会決議としては、次のようなものが望ましいと思う。

 

「我が国の安全保障の確保および自由で開かれたインド太平洋地域の平和的発展のため、日本および台湾との多方面にわたる交流を促進し、並びに関係を強化する法律を制定することを政府に求める」

 ここで大事なのは、「自由で開かれたインド太平洋地域」という巨視的な認識である。中東からわが国に至る海上輸送路を確保するには、「インド太平洋地域」に注目しなければならず、それはまた「自由で開かれた」ものでなければならない。

 

いうまでもなく、その法律の中には、必要な情報を相互に交換すること、台湾の国際機関への加盟や出席を日本が推進すること、政府高官の相互訪問を認めること、海上遭難の救援、災害の救助のための共同演習を行うこと、姉妹都市の締結を促進することなどが含まれていなければならない。

 こうした台湾関係法の制定に向け、国際セミナーを議員会館で開くなど、積極的な動きが最近出ているのは喜ばしいことである。だが、実際に法律を制定するとなると、予想外の重大な障害に直面するのである。

 

党則と国会規則が最大のガン

 

憲法によれば、国会は「最高の議決機関」なのであるから、国会は決議という形で、内閣とは別に国民の意思を明確に表明することができる。そして一旦表明されると相当の政治的な効果を発揮する。

ところが、わが国会は情けないことに、ほとんど独自の意思表示をしないのである。米国や韓国の議会は、毎月のようにはっきり決議し議員立法を行い、内外に対し意思を明らかにしているのに、わが国会は眠ったままなのである。

 

肝心の国会が動かないのには理由がある。自民党が自ら動けないように自分の手足をしばっているからである。決議や議員立法を提案するには、数段階の非常に高いハードルを越えなければならないようにしているのだ。

つまり、決議案や法案について、自民党は、慣例として、党部会の事前審査についで、政調審議会、政務調査会及び総務会の事前審査(全員の同意が必要)を行っており、さらに幹事長と国対委員長の同意をえないと衆院事務局に付託できない慣例となっている。

これが著しく、議員立法の意欲を阻害している。丁寧にこの手続きを踏んでいると、間もなく総選挙が迫ってきて立法どころではなくなるのである。

 

したがって、自民党は、次のように党規則を改定し、審議を早めるようにすべきであろう。

*政務調査会の各部会において三分の二以上の賛成を得たものは、政務調査会に付託することができる。(全員の同意という慣例を改める)

*政務調査会の審議においては、過半数の賛成をもって政務調査会の決定とする。(全員の同意という慣例を改める)

*政務調査会で決定された議員法案および国会決議案は、直ちに衆参委員会に付託することができる。

*党に立法局を設け、議員法案及び国会決議案の審議の補佐に当たるものとする。自民党に金の勘定をする経理局があるものの、肝心の立法局がなく、議員を補佐する専門の職員を養成していないのは、公党として恥ずべき事といわねばなるまい。

 

  国会の改革を急げ

 

さらに言えば、自民党には年間29億円、野党にも10億円以上の「立法事務費」が与えられているにもかかわらず、それらは立法のためではなく、選挙や一般政治活動に使われている現状は改めなければならない。政治資金規正法を改正し、「立法事務費」の使途を領収書を添えて報告する義務を負わせることが必要になってくる。しかし、各党も自分たちに不利益になる法律は制定しようとしないのである。

 

また、 会期不継続の原則(国会法68条)も議員立法を著しく阻害している。これは、前の会期に審議未了となった法案や決議は、新会期に引き継がないという原則である。しかし、一日2億円の国会運営経費とそれ以上の時間コストがかかっていることを考慮すると、会期継続の原則に変更すべきではなかろうか。

 

付け加えて言えば、 国会に付属する5つの立法補佐機関(衆議院調査局、参議院常任委員会調査室、衆参法制局、国立国会図書館調査及び立法考査局) を統合し、ひとつの「国会立法調査院」を国会に設置することも望まれる。

これはかつて、国会で提案されたものであるが、その後延び延びになっている。この立法調査院ができれば、選挙対策で忙しい議員による立法を適時に補佐することができるようになる。現在の国会と各党の補佐体制では、議員による立法提案までは手が回らないのが実情である。

 

  要するに、議員本来の仕事である国会決議や議員立法をさせないようにしているのが、国会であり自民党自身である。その結果、政府立法に頼らざるを得ないことになるが、近年は官僚たちも積極的に動こうとせず、「お手並み拝見」と高みの見物を決め込んでいる。外国代理人法や外国干渉法など、海外からの工作を食い止める法律が急がれているにもかかわらず、動こうとしない。

 

 なぜなら、私も経験があるが、1本の法律を制定しようとすると、内閣法制局や各省庁との協議に始まり、自民党の政調、総務などへ根回しを行い、大臣の国会答弁の草案書きにいたるまで相当の神経質な作業となる。それは寿命が1,2年縮まるほどの苦労を伴うのである。

 自民党と国会は、至急、自分たちの手足を縛っている慣例を破ることから始めてほしいと思う。そうしなければ、台湾どころか、日本さえも守れなくなることを私は心配している。(了)