情報機関の設置に関する基本法

(情報組織の強化及び再編成に関する国会決議にかえてもよい)

 

 

 

日本政府は、パリの武装集団テロを受けて、国際テロ情報収集班を外務省に設けることを2015年末に決定したが、これは情報の取りまとめ窓口にすぎない。外交官にテロの情報収集能力がないことは、これまでのかんばしくない実績からも明らかであり、そもそも秘密工作の訓練を受けていない外交官に期待する筋合いのものでもない。

 

また、自民党のインテリジェンス秘密保全等検討プロジェクトは、16年5月のサミットを控え、テロ防止のための諜報体制の強化を提言する方針を固めたようであるが、動きはすこぶる鈍いものがある。

 なんとももどかしい対応ぶりであるが、テロ情報をはじめ海外の秘密情報を収集する高度の諜報組織が必要であることは、いまさら言うを待たない。

 

 これまで、海外情報の収集は、内閣調査室、防衛省、警察庁、公安調査庁などが担当してきたが、このさい、役割分担を整理する必要がある。この場合、重要なのは、諜報に従事する者の生涯にわたる経歴管理と情報訓練であり、これがしっかりできない組織は、秘密情報組織としては失格である。外務省のように、セキュリティ・クリアランスがゆるく、信賞必罰の行われない組織は、最初から失格といわねばならないし、外交官を情報組織に出向させることも厳に慎まなければならない。

 

わが国の実情にかんがみ、情報組織を再編成する場合、次のように整理、分担するのが最適と思われる。

 

情報機関設置基本法(要綱)

 

 1 内閣情報調査室は、国内外で公開された政治、経済および文化(宗教を含む)上の資料、データを分析し、マクロ的な動向分析を行うとともに、内閣に対し、マクロ的な動向情報を定期的に報告するものとする。(内調の少ない人員、予算および各省庁の寄せ集めで経歴管理ができていないことから、マクロ的な公開資料の分析を行わせるのが、妥当であろう。もちろん、外国首脳の講演、公刊物などの公開情報からも、95%の動きが把握できるのであって、これを軽視すべきではない)

 

 2 防衛省および自衛隊は、海外の軍事情報および軍事関連情報の収集、分析を行う機関を増強する。これには、マクロ的な戦略分析とミクロ的な戦術分析および兵力、武器の性能分析、武器調達の動向などがふくまれる。特に強化すべきは、電子通信情報の収集および海外からの電子攻撃に対抗する手段の開発であり、コミント、エリント、サイビントの能力を飛躍的に強化する必要がある。陸、海、空につぐ第四の自衛隊として、電子空間防衛隊を設けるとともに、独自の通信衛星を管理するものとする。(中国軍のサイバー攻撃に負けないものを整備しなければならない。 また、日本大使館にて勤務する駐在武官を大幅に増やす必要がある。)

 

3 公安調査庁は、戦後、共産革命などの破壊活動を防止するために発足した組織であるので、その対象を共産党及び共産中国、北朝鮮並びにその代理人に限定する。活動は、ヒュ-ミントを主体とする。

 

 4 警察庁は、海外からの対日工作活動に対抗する防諜を行うために、外事組織を全国に大幅に拡大するとともに、外国代理人登録法など所要の法整備をおこなう。また、軍事以外の政治、経済およびテロリズム上の動向について、収集能力を高めるため、防諜および諜報の両面にわたる公安のサイビント能力を飛躍的に向上させることとする。また、独自の高性能の通信衛星を配備、管理するものとする。名称は、警視庁と紛らわしいので、国家公安院と変更し、その下部組織として外事庁を設置する。また、日本大使館に情報官を駐在させ、大使館内の防諜及び諜報工作に当たらせる。

 

5 日本大使館、領事館およびJETROに通信傍受機能を備え、外国内の通信を傍受する。

6 以上の各情報機関は、毎週または適時に国家安全保障局にて情報交換を行う。保障局は、要約ペーパーを総理に挙げるが、この場合、相反する情報分析は併記または注記することとし、決して一つにまとめてはならない。後日の検証に備えるためである。これまで、外務省の誤った分析のみが総理に挙げられ、国益を大いに損ねた例が少なくないからである。

7 国家安全保障局は、最も厳重な防諜設備と人員のセキュリティ・クリアランス手続きを備えていなければならない。

 

以上のような各情報組織の強化、拡充が先決であって、いきなりCIAやMI6、NSAのような独立した大規模な情報機関を作っても機能しないのである。なぜなら、情報要員の訓練と経歴管理には、数十年の歳月を要するからであり、外務省や経済省庁からの寄せ集めは絶対に避けなければならない。秘密工作になれていない外交官を参加させることも避けなければならない。

 

  そして、同時に、秘密工作の権限法を上記の機関に与える必要がある。すなわち、米国の外国諜報監視法(1978)や英国の通信傍受法(1985)のような強力な行政傍受の法律を制定しなければならないのである。見渡したところ、政府も役所も本腰を入れて取り組む覚悟がないようだから、危機感を持つ議員有志が法案をぶつけて民意を喚起する必要があると思う。